Pentiumはインテルの5番目のCPU

1993年5月リリース
Pentium 60
Pentium 60
PentiumInteli486 の後継製品として開発したCPUである。80586やi586という名称では商標として認められないため、ギリシア語で5を意味するPentaとラテン語を組み合わせた Pentium という名称になった。RISCプロセッサの特徴であるスーパースカラーをサポートした画期的なプロセッサである。

スーパースカラー

Pentium ブロック・ダイアグラム
Pentium ブロック・ダイアグラム
スーパースカラーは、1クロック・サイクルに1つ以上の命令を実行できる。Pentium では、内部にUパイプとVパイプという2本の命令パイプラインがあり、簡単な命令であれば同時に2つを処理することができる。
また、内蔵1次キャッシュをデータ用と命令用で独立させ、それぞれ8Kバイトのライト・バック・キャッシュにした。

外部バス 64ビット化

Pentium ダイ拡大写真
Pentium ダイ拡大写真
データ長は32ビットだが、外部データ・バス幅を従来の32ビットから64ビットに拡張することで、メモリへのアクセス速度を高速化した。ところが、当時主流だったメモリは32ビット幅の72ピンSIMMであったため、Pentiumでメモリを増設するには、2枚ずつ増設しなければならなかった。
72ピンSIMM
72ピンSIMM
会社でCOMPAQ製パソコンと増設メモリを購入したのだが、このことを知らず、あとで追加の増設メモリを発注した。どういうわけか、最初のメモリと違う国で製造されたもので、スロットに入らなかった。メモリの型番は同じなので、ヤスリで基板を削ることで無事にスロットに収まった。

FDIVバグ

Socket 5
Socket 5
整数演算ユニットに加え浮動小数点演算ユニットもパイプライン化され、RISCプロセッサにはかなわなかったが、x86プロセッサの中で抜きん出た浮動小数点演算性能を発揮する。

1994年(平成6年)11月、普及し始めたインターネット上に、Pentium の浮動小数点除算命令にバグがあると投稿された(FDIVバグ)。当初、インテルは影響範囲は小さいと説明したが、12月19日、ニューヨークタイムズ紙が報道されたことを受け、公式に謝罪し、全数の無償交換に応じることになった。その費用は、インテルの純利益の2割近くに達した。
Pentium では、それまでビットシフトと減算によって行っていた除算処理を、SRT法と呼ばれる、参照テーブルを使ったものに変更することで、回路規模は大きくなるものの、処理速度を大幅に短縮した。ところが、この参照テーブルの複数箇所にバグがあり、除算結果が期待したものと異なることになった。当時はCPUのバグをファームウェアで修正するという概念がなく、CPU本体を交換するしかなかった。

主要スペック

項目 仕様
メーカー Intel
生産時期 1993年5月~2000年2月
開発コード名 P5
トランジスタ数 310万~450万
データ長 32ビット
外部データバス 64ビット
CPUクロック 60MHz~300MHz
プロセスルール 0.8μm~0.25μm
マイクロアーキテクチャ P5
ソケット Socket 4, Socket 5, Socket 7
TDP 7.1~14.6W

CPUの歴史

発表年 メーカー CPU名 ビット数 最大クロック
1971年インテル40044bit750KHz
1974年インテル80808bit3.125MHz
1975年モステクノロジーMOS 65028bit3MHz
1976年ザイログZ808bit20MHz
1978年インテル808616bit10MHz
1979年モトローラMC68098bit2MHz
1979年ザイログZ800016bit10MHz
1980年モトローラMC6800016bit20MHz
1984年インテル8028616bit12MHz
1985年インテル8038632bit40MHz
1985年サン・マイクロシステムズSPARC32bit150MHz
1986年MIPSR200032bit15MHz
1987年ザイログZ28016bit12MHz
1987年モトローラMC6803032bit50MHz
1989年インテル8048632bit100MHz
1991年MIPSR400064bit200MHz
1990年モトローラMC6804032bit40MHz
1993年インテルPentium32bit300MHz
1994年IBM, モトローラPowerPC 60332bit300MHz
1995年サイリックスCyrix Cx5x8632bit133MHz
1995年AMDAm5x8632bit160MHz
1995年サン・マイクロシステムズUltraSPARC64bit200MHz
1999年IBM, モトローラPowerPC G432bit1.67GHz
1999年AMDAthlon32bit2.33GHz
2000年インテルPentium 432bit3.8GHz
2001年インテルItanium64bit800MHz
2003年AMDOpteron64bit3.5GHz
2003年インテルPentium M32bit2.26GHz
2006年SCE,ソニー,IBM,東芝Cell64bit3.2GHz
2006年インテルCore Duo32bit2.33GHz
2006年インテルCore 2 Duo64bit3.33GHz
2008年インテルCore i9/i7/i5/i364bit5.8GHz
2017年AMDRyzen64bit5.7GHz
2020年AppleM1/M264bit3.49GHz

参考サイト

(この項おわり)
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