Pentium はIntel が i486 の後継製品として開発したCPUである。80586やi586という名称では商標として認められないため、ギリシア語で5を意味するPentaとラテン語を組み合わせた Pentium という名称になった。RISCプロセッサの特徴であるスーパースカラーをサポートした画期的なプロセッサである。
スーパースカラー
スーパースカラーは、1クロック・サイクルに1つ以上の命令を実行できる。Pentium では、内部にUパイプとVパイプという2本の命令パイプラインがあり、簡単な命令であれば同時に2つを処理することができる。
また、内蔵1次キャッシュをデータ用と命令用で独立させ、それぞれ8Kバイトのライト・バック・キャッシュにした。
また、内蔵1次キャッシュをデータ用と命令用で独立させ、それぞれ8Kバイトのライト・バック・キャッシュにした。
外部バス 64ビット化
データ長は32ビットだが、外部データ・バス幅を従来の32ビットから64ビットに拡張することで、メモリへのアクセス速度を高速化した。ところが、当時主流だったメモリは32ビット幅の72ピンSIMMであったため、Pentiumでメモリを増設するには、2枚ずつ増設しなければならなかった。
会社でCOMPAQ製パソコンと増設メモリを購入したのだが、このことを知らず、あとで追加の増設メモリを発注した。どういうわけか、最初のメモリと違う国で製造されたもので、スロットに入らなかった。メモリの型番は同じなので、ヤスリで基板を削ることで無事にスロットに収まった。
FDIVバグ
整数演算ユニットに加え浮動小数点演算ユニットもパイプライン化され、RISCプロセッサにはかなわなかったが、x86プロセッサの中で抜きん出た浮動小数点演算性能を発揮する。
1994年(平成6年)11月、普及し始めたインターネット上に、Pentium の浮動小数点除算命令にバグがあると投稿された(FDIVバグ)。当初、インテルは影響範囲は小さいと説明したが、12月19日、ニューヨークタイムズ紙が報道されたことを受け、公式に謝罪し、全数の無償交換に応じることになった。その費用は、インテルの純利益の2割近くに達した。
1994年(平成6年)11月、普及し始めたインターネット上に、Pentium の浮動小数点除算命令にバグがあると投稿された(FDIVバグ)。当初、インテルは影響範囲は小さいと説明したが、12月19日、ニューヨークタイムズ紙が報道されたことを受け、公式に謝罪し、全数の無償交換に応じることになった。その費用は、インテルの純利益の2割近くに達した。
Pentium では、それまでビットシフトと減算によって行っていた除算処理を、SRT法と呼ばれる、参照テーブルを使ったものに変更することで、回路規模は大きくなるものの、処理速度を大幅に短縮した。ところが、この参照テーブルの複数箇所にバグがあり、除算結果が期待したものと異なることになった。当時はCPUのバグをファームウェアで修正するという概念がなく、CPU本体を交換するしかなかった。
主要スペック
項目 | 仕様 |
---|---|
メーカー | Intel |
生産時期 | 1993年5月~2000年2月 |
開発コード名 | P5 |
トランジスタ数 | 310万~450万 |
データ長 | 32ビット |
外部データバス | 64ビット |
CPUクロック | 60MHz~300MHz |
プロセスルール | 0.8μm~0.25μm |
マイクロアーキテクチャ | P5 |
ソケット | Socket 4, Socket 5, Socket 7 |
TDP | 7.1~14.6W |
CPUの歴史
発表年 | メーカー | CPU名 | ビット数 | 最大クロック |
---|---|---|---|---|
1971年 | インテル | 4004 | 4bit | 750KHz |
1974年 | インテル | 8080 | 8bit | 3.125MHz |
1975年 | モステクノロジー | MOS 6502 | 8bit | 3MHz |
1976年 | ザイログ | Z80 | 8bit | 20MHz |
1978年 | インテル | 8086 | 16bit | 10MHz |
1979年 | モトローラ | MC6809 | 8bit | 2MHz |
1979年 | ザイログ | Z8000 | 16bit | 10MHz |
1980年 | モトローラ | MC68000 | 16bit | 20MHz |
1984年 | インテル | 80286 | 16bit | 12MHz |
1985年 | インテル | 80386 | 32bit | 40MHz |
1985年 | サン・マイクロシステムズ | SPARC | 32bit | 150MHz |
1986年 | MIPS | R2000 | 32bit | 15MHz |
1987年 | ザイログ | Z280 | 16bit | 12MHz |
1987年 | モトローラ | MC68030 | 32bit | 50MHz |
1989年 | インテル | 80486 | 32bit | 100MHz |
1991年 | MIPS | R4000 | 64bit | 200MHz |
1990年 | モトローラ | MC68040 | 32bit | 40MHz |
1993年 | インテル | Pentium | 32bit | 300MHz |
1994年 | IBM, モトローラ | PowerPC 603 | 32bit | 300MHz |
1995年 | サイリックス | Cyrix Cx5x86 | 32bit | 133MHz |
1995年 | AMD | Am5x86 | 32bit | 160MHz |
1995年 | サン・マイクロシステムズ | UltraSPARC | 64bit | 200MHz |
1999年 | IBM, モトローラ | PowerPC G4 | 32bit | 1.67GHz |
1999年 | AMD | Athlon | 32bit | 2.33GHz |
2000年 | インテル | Pentium 4 | 32bit | 3.8GHz |
2001年 | インテル | Itanium | 64bit | 800MHz |
2003年 | AMD | Opteron | 64bit | 3.5GHz |
2003年 | インテル | Pentium M | 32bit | 2.26GHz |
2006年 | SCE,ソニー,IBM,東芝 | Cell | 64bit | 3.2GHz |
2006年 | インテル | Core Duo | 32bit | 2.33GHz |
2006年 | インテル | Core 2 Duo | 64bit | 3.33GHz |
2008年 | インテル | Core i9/i7/i5/i3 | 64bit | 5.8GHz |
2017年 | AMD | Ryzen | 64bit | 5.7GHz |
2020年 | Apple | M1 | 64bit | 3.49GHz |
2023年 | インテル | Core Ultra 9 / 7 / 5 | 64bit | 5.1GHz |
参考サイト
- CPU黒歴史 大損失と貴重な教訓を生んだPentiumのバグ:ASCII.jp
(この項おわり)