Power PC は、1991年(平成3年)、アップルコンピュータ、IBM、モトローラの3社が共同開発したRISCプロセッサのシリーズ名である。PPC と略記される。
1980年代後半、パソコンに搭載されているCPUは、実行する命令形式の種類を増やし、複雑な処理を行えるようにする CISC(Complex Instruction Set Computer)方式が主流であった。インテルのx86系や、モトローラの68kシリーズが代表である。
CISCは、ソフトウェア側で指定する命令を減らせる利点がある反面、CPUの仕組みが複雑になり高速化が困難となり、いずれ性能向上に限界がくるという説が有力であった。
そこで、命令数を減らししてプログラムの処理速度を向上させる RISC(Reduced Instruction Set Computer)方式が登場した。
IBMは1990年(平成2年)、RISC プロセッサ POWER を開発し、これをパソコンに転用しようと目論見、アップルコンピュータに声をかけた。当時、MacintoshではモトローラのCISCプロセッサである68kを搭載していたが、RISC に転換することを決断。モトローラを巻き込んでAIM連合を結成した。ここで開発されるのが Power PC である。
IBMは1990年(平成2年)、RISC プロセッサ POWER を開発し、これをパソコンに転用しようと目論見、アップルコンピュータに声をかけた。当時、MacintoshではモトローラのCISCプロセッサである68kを搭載していたが、RISC に転換することを決断。モトローラを巻き込んでAIM連合を結成した。ここで開発されるのが Power PC である。
そして1994年(平成6年)、Power PC を搭載する Power Macintosh が登場した。
ちなみに、アップルはアーキテクチャに見切りを付けるのが早く、2005年(平成17年)にはインテルCPUへの移行を決断する。
ちなみに、アップルはアーキテクチャに見切りを付けるのが早く、2005年(平成17年)にはインテルCPUへの移行を決断する。
Power PC は、命令セットやレジスタセット、アドレッシング、キャッシュなどの基本アーキテクチャの動作を規定するのみで、それらをどう実装するかはCPUメーカーに委ねる形をとった。これは、Windows NT、OS/2、Solaris、AIXといった複数のOSを動かすことを目的とした戦略であったが、結局、インテルの牙城を崩すことはできなかった。
わが家に最初にやってきたのは、アップル Performa 5220 に搭載されていた PowerPC 603 である。
POWERプロセッサをベースに設計されたPowerPC 601、602の次の世代(G2)であり、低消費電力に主眼を置いて開発され、アルミ配線となっている。
消費電力は3W以下と、同クロックの PowerPC 601 や Pentium の半分以下である。
POWERプロセッサをベースに設計されたPowerPC 601、602の次の世代(G2)であり、低消費電力に主眼を置いて開発され、アルミ配線となっている。
消費電力は3W以下と、同クロックの PowerPC 601 や Pentium の半分以下である。
MacOS 8.5からPowerPC専用となったが、それまでは68k命令をソフトウェア・エミュレーションして実行していたため、動作が遅かった。
Power PC は、Macintosh以外に、ニンテンドーゲームキューブ、Wii、Wii U、PlayStation 3(Cellプロセッサ)、Xbox 360などに搭載された。また、NASやルーターなどの組み込み機器での利用も多い。
Power PC は、Macintosh以外に、ニンテンドーゲームキューブ、Wii、Wii U、PlayStation 3(Cellプロセッサ)、Xbox 360などに搭載された。また、NASやルーターなどの組み込み機器での利用も多い。
PowerPC 603 アーキテクチャ
1クロックあたり3命令(うち1つは分岐)を実行できるスーパースカラ構造で、4ステージのパイプラインと5つの実行ユニット(整数ユニット、浮動小数点ユニット、 分岐予測ユニット、ロード/ストアユニットおよびシステムレジストリユニットを搭載する。L1キャッシュは16KB(命令8Kバイト、データ8Kバイト)。L2キャッシュはシステムバス上に搭載する。
コア2.5V、I/O 3.3Vの低電圧動作が可能で、さらにパワーマネジメントシステムを搭載しており、スリープモード時にはわずか2mWしか消費しない。
CPU単体の性能としては先行する Pentium に引けを取らず、消費電力が圧倒的に低いというアドバンテージがあったにも関わらず、MacOSを含むソフトウェア製品のPowerPC対応が遅れ、大半のユーザーが64kエミュレーションモードを利用していたために、PowerPCは遅いという印象を与えてしまった。
PowerPC 603e ではL1キャッシュを32Kバイトに増やし、最終的なクロックは300MHzに達した。
CPU単体の性能としては先行する Pentium に引けを取らず、消費電力が圧倒的に低いというアドバンテージがあったにも関わらず、MacOSを含むソフトウェア製品のPowerPC対応が遅れ、大半のユーザーが64kエミュレーションモードを利用していたために、PowerPCは遅いという印象を与えてしまった。
PowerPC 603e ではL1キャッシュを32Kバイトに増やし、最終的なクロックは300MHzに達した。
PowerPC 604
Power PC 603 と同じ時期、演算性能を高めたCPUとして PowerPC 604 がリリースされた。
4命令実行可能なスーパースカラ構造に、整数演算ユニットを3つ、浮動小数点演算ユニットを1つ、32~64KバイトのL1キャッシュを搭載した。マルチプロセッサにも対応していた。
消費電力は Power PC 603 よりは多いが、それでも平均6W、最大10Wと、Pentium よりも省電力だった。
しかし、構造が複雑なために高クロック化が難しく、Macintoshに搭載された動作クロックは350MHzが最高だった。
4命令実行可能なスーパースカラ構造に、整数演算ユニットを3つ、浮動小数点演算ユニットを1つ、32~64KバイトのL1キャッシュを搭載した。マルチプロセッサにも対応していた。
消費電力は Power PC 603 よりは多いが、それでも平均6W、最大10Wと、Pentium よりも省電力だった。
しかし、構造が複雑なために高クロック化が難しく、Macintoshに搭載された動作クロックは350MHzが最高だった。
PowerPC G3
Apple、IBM、モトローラは共同で PowerPC 603 の改良を行い、1997年(平成9年)12月、PowerPC 750 としてリリースした。Appleでは第3世代のPowerPCという意味で、PowerPC G3 と呼んだ。
L1キャッシュを64Kバイトと倍増し、その帯域も16バイト/サイクルに倍増させた。また、L2キャッシュを専用バスを介してCPUに直結させることで、アクセスを高速化した。
L1キャッシュを64Kバイトと倍増し、その帯域も16バイト/サイクルに倍増させた。また、L2キャッシュを専用バスを介してCPUに直結させることで、アクセスを高速化した。
整数演算ユニットを2つに増やし、多くの整数演算命令を2つ同時に実行することが可能になった。動的分岐予測機構を採用し、1サイクル早く命令キューに分岐先の命令を入れることができるようになった。
消費電力は、500MHzで平均6.0W、最大7.5Wと、そのままノートPCにも搭載することができた。
しかし、純粋な演算性能では PowerPC 604 に劣り、これを超えるにはAltiVecを搭載する PowerPC G4 の登場を待たねばならなかった。
消費電力は、500MHzで平均6.0W、最大7.5Wと、そのままノートPCにも搭載することができた。
しかし、純粋な演算性能では PowerPC 604 に劣り、これを超えるにはAltiVecを搭載する PowerPC G4 の登場を待たねばならなかった。
主要スペック
項目 | 仕様 |
---|---|
メーカー | IBM, モトローラ |
発売開始 | 1994年 |
トランジスタ数 | 160万~260万 |
データバス | 32ビット |
1次キャッシュ | 命令:8~16KB データ:8~16KB |
物理メモリ | 4GB |
CPUクロック | 66~300MHz |
プロセスルール | 0.5~0.29μm |
ソケット | 240ピンQFP |
最大消費電力 | 2.5~6.0W |
CPUの歴史
発表年 | メーカー | CPU名 | ビット数 | 最大クロック |
---|---|---|---|---|
1971年 | インテル | 4004 | 4bit | 750KHz |
1974年 | インテル | 8080 | 8bit | 3.125MHz |
1975年 | モステクノロジー | MOS 6502 | 8bit | 3MHz |
1976年 | ザイログ | Z80 | 8bit | 20MHz |
1978年 | インテル | 8086 | 16bit | 10MHz |
1979年 | モトローラ | MC6809 | 8bit | 2MHz |
1979年 | ザイログ | Z8000 | 16bit | 10MHz |
1980年 | モトローラ | MC68000 | 16bit | 20MHz |
1984年 | インテル | 80286 | 16bit | 12MHz |
1985年 | インテル | 80386 | 32bit | 40MHz |
1985年 | サン・マイクロシステムズ | SPARC | 32bit | 150MHz |
1986年 | MIPS | R2000 | 32bit | 15MHz |
1987年 | ザイログ | Z280 | 16bit | 12MHz |
1987年 | モトローラ | MC68030 | 32bit | 50MHz |
1989年 | インテル | 80486 | 32bit | 100MHz |
1991年 | MIPS | R4000 | 64bit | 200MHz |
1990年 | モトローラ | MC68040 | 32bit | 40MHz |
1993年 | インテル | Pentium | 32bit | 300MHz |
1994年 | IBM, モトローラ | PowerPC 603 | 32bit | 300MHz |
1995年 | サイリックス | Cyrix Cx5x86 | 32bit | 133MHz |
1995年 | AMD | Am5x86 | 32bit | 160MHz |
1995年 | サン・マイクロシステムズ | UltraSPARC | 64bit | 200MHz |
1999年 | IBM, モトローラ | PowerPC G4 | 32bit | 1.67GHz |
1999年 | AMD | Athlon | 32bit | 2.33GHz |
2000年 | インテル | Pentium 4 | 32bit | 3.8GHz |
2001年 | インテル | Itanium | 64bit | 800MHz |
2003年 | AMD | Opteron | 64bit | 3.5GHz |
2003年 | インテル | Pentium M | 32bit | 2.26GHz |
2006年 | SCE,ソニー,IBM,東芝 | Cell | 64bit | 3.2GHz |
2006年 | インテル | Core Duo | 32bit | 2.33GHz |
2006年 | インテル | Core 2 Duo | 64bit | 3.33GHz |
2008年 | インテル | Core i9/i7/i5/i3 | 64bit | 5.8GHz |
2017年 | AMD | Ryzen | 64bit | 5.7GHz |
2020年 | Apple | M1 | 64bit | 3.49GHz |
2023年 | インテル | Core Ultra 9 / 7 / 5 | 64bit | 5.1GHz |
参考サイト
- PowerPCでx86の市場を切り崩しにかかったIBM:ASCII
- PowerPC 603 RISC Microprocessor Hardware Specifications
- Performa 5220 は 我が家初の Macintosh:ぱふぅ家のホームページ
- Z80 で機械語を学ぶ:ぱふぅ家のホームページ
- 8086は x86アーキテクチャの元祖:ぱふぅ家のホームページ
- Intel 80286 は MS-DOS上の最速CPU:ぱふぅ家のホームページ
- Zilog Z280 は画期的だが商業的に失敗したCPU:ぱふぅ家のホームページ
- Intel 80486はワイヤードロジックで高速化:ぱふぅ家のホームページ
- Pentiumはインテルの5番目のCPU:ぱふぅ家のホームページ
- PowerPC G4 は AltiVecを搭載:ぱふぅ家のホームページ0
- 「Pentium M」はPentium 4を駆逐する?:ぱふぅ家のホームページ
- Intel Core Duo はモバイル向け初のデュアルコア:ぱふぅ家のホームページ
- Intel Core Duo はモバイル向け初のデュアルコア:ぱふぅ家のホームページ
- Intel Core 2 Duo は 64ビットCPU:ぱふぅ家のホームページ
- Core i シリーズは10年以上のロングラン製品:ぱふぅ家のホームページ
- Apple M1 チップは Mac用マイクロプロセッサ:ぱふぅ家のホームページ
- PHPで対数グラフ(ムーアの法則)を描く:ぱふぅ家のホームページ
(この項おわり)