Core i シリーズは15年近く続いたロングラン製品

2008年11月発売開始
Core i9-11900K
Core i9-11900K
Core 2 に続くCPUとして、インテルは2008年(平成20年)11月、Nehalem (ネハレム)  と呼ぶマイクロアーキテクチャを搭載したCPUの販売を開始した。最初はサーバ向け Xeon ブランド(コア数4または8)と、ハイエンド・デスクトップPC向けの Core i7(コア数4)がリリースされた。
2023年(令和5年)10月現在、第14世代(開発コード:Raptor Lake Refresh)が販売されている。

Core i シリーズ

  アーキテクチャ CPU型番 コア数 プロセスルール トランジスタ数 内蔵GPU
1 Nehalem
(Westmere)
Core i7 950, Core i5 670など3桁 2~6 45~32nm 約7.7億 ---
2 Sandy Bridge Core i7-2600, Core i3-2100など2000番台 2~4 32nm 約10億 HD 2000~3000
3 Ivy Bridge Core i7-3770, Core i3-3220など3000番台 1~4 22nm 約11.6億 HD 2500~4000
4 Haswell Core i7-4770, Core i3-4370など4000番台 2~4 22nm 約14.8億 HD 4200~5200
Iris Pro 5100~5200
5 Broadwell Core i7-5775C, Core i3-5020Uなど5000番台 2~10 14nm 約19億 HD 5500~6000
Iris Pro 6000~6200
6 Skylake Core i7-6700, Core i3-6300など6000番台 2~18 14nm HD 510~530
Iris 540~550
7 Kaby Lake Core i7-7700, Core i3-7300など7000番台 2~4 14nm HD 510~530
8 Coffee Lake Core i7-8700, Core i3-8100など8000番台 4~6 14nm UHD 630
9 Coffee Lake
Refresh-S
Core i9-9900K, Core i7-9700Kなど9000番台 4~8 14nm UHD 630
10 Comet Lake Core i9-10900K, Core i7-10700Kなど10000番台 4~10 14nm++ UHD 630
11 Tiger Lake Core i7-1160G7, Core i5-1130G7など1100番台 2~10 10nm++ Iris Xe
Rocket Lake-S Core i9-11900K,Core i7-11700Kなど11000番台 4~8 14nm++ UHD 730~750
12 Alder Lake Core i9-12900K,Core i7-12700Kなど12000番台 10~16 Intel 7
(10nm)
UHD 770
13 Raptor Lake Core i9-13900K,Core i7-13700Kなど13000番台 14~24 Intel 7
(10nm)
UHD 770
14 Raptor Lake Refresh Core i9-14900K,Core i7-14700Kなど14000番台 14~24 Intel 7
(10nm)
UHD 770

第1世代:Nehalem

Nehalemのダイ
Nehalemのダイ
Nehalem ではチップデザインを根本的に見直し、機能ブロック毎にモジュール化された。これにより、マルチコアCPUの設計が容易になった。
CPUには3段階のキャッシュメモリが搭載された。CPUに最も近い1次キャッシュはデータと命令キャッシュの2つで、それぞれが32KB。2次キャッシュはCPUコアごとに256KB。3次キャッシュは共有で約8MBある。80286 のメインメモリが最大16MBだったことを思い起こすと、隔世の感がある。
Nehalemのブロック図
Nehalemのブロック図
Nehalem では、CPUにメモリコントローラを内蔵した。CPUが直接メモリにアクセスすることが可能になり、またトリプルチャネルに対応したことから、メモリアクセス速度が向上する一方、メモリチップの進化に合わせてCPUを変えていくという運命を背負うことになる。

CPUとチップセット間のインターコネクトバスが、従来のシステムバス(FSB)から、QPI(QuickPath Interconnect)に変更された。QPIは、PCI Expressと同様、シリアルインターフェイスで、上り下りそれぞれに20bitずつの帯域を持ち、25.6GB/秒のデータレートを実現している。
HTテクノロジー
HTテクノロジー
Nehalem では、Pentium 4に搭載されていたHT(Hyper-Threading)テクノロジーが復活した。HTにより、物理4コアを搭載するCore i7プロセッサは、ソフトウェアからは8コアあるように見せることができる。
また、32ビットのCoreアーキテクチャに備わっていたマクロフュージョンが64ビットでもサポートされた。さらに、環境に応じて自動でクロックアップするターボ・ブースト・テクノロジーが搭載された。これらの改良により、処理速度が向上した。
Core i3/i5/i7
Core i3/i5/i7
2009年(平成21年)9月には、メインストリームPC向けに開発された Core i5 シリーズが登場する。Core i7 と同じ4コアだが、HTが無効化されている。
2010年(平成22年)1月には、コストパフォーマンスを重視する廉価版PC向けに開発された Core i3 シリーズが登場する。Core i5 に比べ、2コアに減らされ、ターボ・ブースト・テクノロジーが省かれている。
インテルのTick-Tock戦略
インテルのTick-Tock戦略
インテルは、Core Duo から Tick-Tock (チック・タック)  と呼ばれる開発戦略をとっている。
ムーアの法則に基づいて、約2年ごとに製造プロセスの微細化を行っているが、回路設計はそのままに新たなプロセスルールを導入した世代を Tick、プロセスルールはそのままに新たな回路設計を導入した世代を Tock として、毎年 TickTock を交互に繰り返している。これにより、新製品を途切れなくリリースするとともに、品質問題を開発にフィードバックしやすくなる。
Nehalemは Tock で、2010年(平成22年)に登場する WestmereTick となる。

第2世代:Sandy Bridge

Sandy Bridgeのダイ
Sandy Bridgeのダイ
2011年(平成23年)1月、Intel HD Graphics と呼ぶGPUを内蔵した Sandy Bridge (サンディブリッジ)  が発売された。
第1世代の最後発CPUにも搭載されていたが、L3キャッシュに接続したり、動画のハードウェアエンコード(Intel Quick Sync Video)を行うメディアエンジンを統合するなど、高速化が図られている。
2011年(平成23年)11月には、ハイエンドユーザー向けに6コアを搭載したCore i7-3960Xが追加された。
プロセスルールは42nmから32nm微細化され消費電力が減ったことから、動作周波数が3GHzを超える製品が登場した。

Sandy Bridgeでは、従来のSSEでは128ビット幅だったSIMDレジスタが256ビット幅に拡張され、1クロックで256ビット演算が可能となった。処理によっては最大2倍のパフォーマンスを発揮する。

Intel HD Graphicsにより、3D描画が2倍以上に高速化され、さらに従来より高速かつ低CPU負荷でビデオのエンコード/デコードが可能になった。

第3世代:Ivy Bridge

Core i7-3770K
Core i7-3770K
2012年(平成24年)4月、世界初の 3次元トライゲート・トランジスターと22nmプロセスを採用した Ivy Bridge (アイビーブリッジ) Tick)が発売され、内蔵GPUの性能強化と消費電力の低下が話題となった。
型番の末尾にUが付くモデルはTDPが17Wまで下がり、インテルが提唱する薄型ノートPC「Ultrabook」に搭載された。
3次元トライゲート・トランジスター
3次元トライゲート・トランジスター
3次元トライゲート・トランジスターは、その名が示すとおり、トランジスタの構造を2次元から3次元にすることで、プロセスの微細化によって無視できなくなったリーク電流(漏れ電流)を抑えることが可能になるというもの。消費電力を同じに設定すれば性能は37%向上し、性能を同等に設定した場合は消費電力が半減するという。
Ivy Bridgeのダイ写真
Ivy Bridgeのダイ写真
ダイ写真を見ると、Sandy Bridge よりGPUの占める割合がかなり大きくなっており、その性能は約2倍になるという。
また、インテル製GPUとして初めて、GPGPU機能(GPUを演算処理に応用)がサポートされた。
Intel 7シリーズ・チップセット
Intel 7シリーズ・チップセット
チップセットである Intel 7シリーズは、高速データ転送規格のUSB 3.0やThunderboltを標準でサポートし、3画面出力にも対応する。

また、セキュア・キーやOSガードなど、個人情報保護や個人認証を行うセキュリティー機能が新たに追加された。

第4世代:Haswell

Haswell
Haswell
2013年(平成25年)8月、Haswell (ハズウェル) Tock)が発売された。
当初、ベンチマークで Ivy Bridge とほとんど変わらないスコアが出たことから、散々な船出となったが、2014年(平成26年)にリリースされた Haswell Refresh では、内蔵GPUによるグラフィック処理を最大2倍に高速化した。また、L2キャッシュの構造を見直し、帯域を倍増することで、同クロックの Ivy Bridge に比べて10%の処理速度向上が望める。
Haswell Refresh の内蔵GPUは、Ivy Bridge の延長線上にあるIntel HD graphicsと、内蔵GPUの演算ユニットを2.5倍に増設したIntel Iris graphicsの2系統5レベルに分かれた。この分類が複雑で、市場に誤解を招いた感は拭えない。

省電力性能がさらに向上した。
アイドル時の省電力機能にC6/C7/C8/C9/C10ステートが追加され、数が増えるにつれアイドル時の電力消費が低減され、C10ステートでは消費電力が45mW程度にまで抑えられる。ただし、数が増えるにつれ通常状態に復帰するのに時間がかかるという制約もある。
NehalemからHaswellまで
NehalemからHaswellまで
Haswellのダイ写真
Haswellのダイ写真
ダイ写真を見ると、Ivy Bridge に引き続きGPUの占める割合が大きくなっており、長細くなっている。上の写真の通り、ヒートスプレッダを取り除くと、その違いがわかる。

第5世代:Broadwell

Broadwell
Broadwell
2014年(平成26年)9月、Broadwell (ブロードウェル) Tick)が発売された。
CPU性能は Haswell とほとんど変わらないものの、22nmから14nmに微細化したことで得られた実装面積をGPU強化に充て、省電力化することで高圧縮動画の連続再生でもバッテリー駆動時間を長くすることに成功した。

第6世代:Skylake

Skylakeのダイ写真
Skylakeのダイ写真
2015年(平成27年)8月、Skylake (スカイレイク) Tock)が発売された。
Skylake は、製品種類が豊富なのが特徴だ。インテルは、最初に発表した Core i7-6700K, Core i5-6600k に続き、46製品を一挙に発表した。
Core i9-7980XEのダイ写真
Core i9-7980XEのダイ写真
さらに2017年(平成29年)7月には、コア数10~18、スレッド数20~36の Core i9シリーズ を発売開始した。
  • Skylake-S:デスクトップPC向け
  • Skylake-H:高性能ノートPC向け
  • Skylake-U:薄型ノートPC向け
  • Skylake-Y:タブレットおよび薄型ノートPC向け(Core mブランド)
Core i9/i7/i5/i3
Core i9/i7/i5/i3
内蔵GPUはDirectX 12対応となり、メディア再生時のデコード処理を行うハードウェアを強化する一方で、消費電力を削減した。4Kビデオの60Hz出力に対応している。
メモリは、DDR3 SDRAMの約2倍の伝送速度をもつDDR4 SDRAMに対応。また、DDR3 SDRAM(DDR3L)にも対応している。

第7世代:Kaby Lake

Kaby Lakeのダイ写真
Kaby Lakeのダイ写真
2016年(平成28年)8月、Kaby Lake (カビーレイク) が発売された。10nmプロセスの開発が遅れたため、Tick-Tock 戦略を諦め、14nmプロセスを改良する形で、消費電力を維持したままクロックを12%向上させている。

内蔵GPUのメディアエンジンが強化され、10bitのH.265/HEVCのハードウェアデコード/エンコード、VP9のハードウェアエンコードができるようになった。HDCP 2.2にも対応している。
Windows 10
Windows 10
マイクロソフトは、Kaby Lake をサポートするのは Windows 10 だけで、Windows 7以前はサポートしないという方針を明らかにした。

第8世代:Coffee Lake

Coffee Lakeのダイ写真
Coffee Lakeのダイ写真
2017年(平成29年)8月、Coffee Lake (コーヒーレイク) が発売された。14nmプロセスをさらに改良し、前モデルでコア数を2基増加させた。つまり、Core i7/i5は6コアに、Core i3は4コアとなった。
CPUコアそのものや内蔵GPUは Kaby Lake 世代とほとんど変わりない。

第9世代:Coffee Lake Refresh-S

Coffee Lake Refresh-Sのダイ写真
Coffee Lake Refresh-Sのダイ写真
2018年(平成30年)10月、Coffee Lake Refresh-S が発売された。
プロセス微細化のめどが立たず、Coffee Lakeの14nmプロセスのままで、内蔵CPUもIntel UHD Graphics 630のままだが、Core i7とCore i9は物理8コアに、Core i5は物理6コアと、コア数が増えた。ただし、ハイパースレッディングが有効なのはCore i9のみである。
これは同年4月に発売された8コア16スレッドAMD製 Ryzen 7 2700Xに対抗するためであろう。
ハードウェア脆弱性のMeltdown V3(Rogue Data Cache Load)とV5(L1 Terminal Fault)にハードウェアレベルで対応した。

CINEBENCH R15 で比較すると、Ryzen 7 2700XのスコアはCore i7-9700(8コア8スレッド)とCore i9-9900K(8コア16スレッド)の中間となる。
総合ベンチマーク PCMark 10 で比較すると、Core i5-9600K(6コア6スレッド)以上の第9世代CPUはRyzen 7 2700Xのスコアを上回る結果となっている。

第10世代:Comet Lake

Comet Lakeのダイ写真
Comet Lakeのダイ写真
2019年(令和元年)8月、Comet Lake が発売された。翌2020年(令和2年)4月、デスクトップ向けの Comet Lake-S が発売開始。
CPUコアは Cascade Lake と呼ばれる新マイクロアーキテクチャで、深層学習に最適化された命令セットを搭載している。14nmプロセスに戻すことで、AMD製品に対抗できるほど大幅な価格性能比を向上させた。

全てのCoreプロセッサがハイパースレッディングに対応しており、シングルコア稼働に最適化され、動作クロックは最大5.3GHzに達する。その分、TDPは最大165Wとなり、この点でAMDとの差は埋まっていない。内蔵GPUも第9世代のままだ。CPUソケットは新たにLGA1200となり、従来のLGA1151とは互換性がなくなっている。

Core i9とCore i7で、より高速なDDR4-2933メモリをサポートした。
対応チップセットはIntel 400シリーズで、2.5GbE対応コントローラー Intel i225-V や、Wi-Fi 6:blue(IEEE 802.11ax)対応の無線LANモジュール AX201 をサポートした。PCI Expressは3.0のままで、チップセット側が24レーン、CPUと合わせてプラットフォーム全体で40レーンとなっている。

第11世代:Tiger Lake

Tiger Lakeのダイ写真
Tiger Lakeのダイ写真
2020年(令和2年)9月、Tiger Lake が発売された。
CPUコアは、前世代のSunny Coveアーキテクチャを改良した Willow Cove で、10nmプロセス、内蔵GPUはXe-LPである。L2キャッシュが従来製品の512KBから1.25MBへ、L3キャッシュも12MB/24MBに増強されている。
従来比でCPU性能が20%向上し、iGPU性能は2倍、AI処理性能に関しては5倍になったとしている。Wi-Fi 6はもちろん、Thunderbolt 4、PCI Express 4.0(PCIe Gen 4)といった最新規格にも対応している。
SuperFin という新技術を投入し、高性能トランジスタを使うことで性能を上げた。Sunny Coveが3.9GHzで動作するところを、同じ電圧で約1GHzほど上回る4.8GHzで駆動可能となっている。
TDP枠により、UP3(TDP 15W)、UP4(TDP 9W)に分類されている。

GPUは、モバイルだけでなく、HPCもカバーできるように単体GPUとして開発したGPUアーキテクチャ Xe に基づく統合型GPU「Xe-LP」が内蔵されている。Xe-LPは実行エンジンが従来モデルの64基から96基に増やされ、16MBのL3キャッシュを内蔵しているなどの内部リソースの強化が図られ、Ice Lake に内蔵されているGen 11 GPUの2倍の性能を実現している。なお、Xe-LPの正式名称は「Intel Iris Xe Graphics」となり、EUが48基と半分になるローエンドモデルは従来と同じく「Intel UHD Graphics」となる。
Rocket Lake-Sのダイ写真
Rocket Lake-Sのダイ写真
2021年(令和3年)3月、デスクトップ向け Rocket Lake-S が販売開始された。第10世代と同じく14nmプロセスに据え置かれ、最大8コア16スレッド構成とコアとスレッドが削減されている。しかし、モバイル向け第10世代Coreプロセッサ(Ice Lake)CPUコアのアーキテクチャを14nmプロセス用に再設計した Cypress Cove を導入することで、クロック当たりの命令処理数を引き上げ、Comet Lake-S 比で Rocket Lake-S はIPCが最大約19%向上しているという。
また、Comet Lake-S で導入された Intel Turbo Boost Max Technology 3.0(TBT 3.0)、Intel Thermal Velocity Boost Technology(TVB)など、高クロック駆動を実現するための機能は引き継いでいる。
Comet Lake-S に無い機能として、CPU直結のPCI Expressバスが最大レーン数が16から20に拡大され、より高速なPCI Express 4.0をサポートした。メインメモリは、全てのモデルでDDR4-3200(PC4-25600)規格とDDR4-2933(PC4-23400)規格をサポートする。
Rocket Lake-S のCPUソケットは、Comet Lake-S と同じ LGA 1200 である。PCI Express 4.0とDDR4-3200を利用するにはIntel 500シリーズチップセットが必要となる。
内蔵GPUは Tiger Lake と同じXeアーキテクチャとなったが、実行ユニット数は24~32基と少なめで、Intel UHD Graphics 730または750と呼ばれる。

第12世代:Alder Lake

Alder Lakeのダイ写真
Alder Lakeのダイ写真
2021年(令和3年)11月、Alder Lake (アルダーレイク)  が発売された。
Apple M1のように、処理性能を重視する「パフォーマンスコア」(Pコア)と省電力性を重視する「高効率コア」(Eコア)を組み合わせる設計を採用している。また、スケーラビリティーも重視しており、単一のアーキテクチャでウルトラモバイルからデスクトップPCまでカバーできるとしている。
デスクトップ向け製品は、Intel Z690チップセットと組み合わせて使うと、全てのオーバークロック機能を有効化できるという。Intel Dynamic Memory Boost Technologyにより、一定条件を満たせば、DDR4/DDR5メモリを必要な時だけオーバークロック駆動することができる。
PコアEコアにタスクの割り振りを受け持つIntel Thread Director(ITD)が搭載された。ITDは、OSのスケジューラーと協調して動作するようになっており、処理作業の負荷、他の処理の進み具合、CPUの発熱状況、電源の供給状況などを総合的に判断した上で処理を行うコアの割り振りを行う。Pコアでループ(ビジー)ウェイトが生じた場合は、処理をEコアに移管することも可能だ。
Windows 11 は、ITDが最適なパフォーマンスを発揮するよう調整されているという。Intelによると、LinuxChrome OS への対応も進んでいるという。
なお、Eコアはハイパースレッディングに対応しない。

キャッシュメモリの設計が変更された、
L2キャッシュは MLCメモリである。Pコアは、各コアが1.25MBの独立したL2キャッシュを搭載。一方、Eコアは4つのコアが2MBのL2キャッシュを共有する。たとえば、「Pコア×8+Eコア×8」という構成の製品では、合計14MB(Pコア10MB+Eコア4MB)のL2キャッシュを備える。
L3キャッシュはTLCメモリで、PコアEコアGPUコアの三者が共有する Intel Smart Cacheとなった。容量は製品によって異なり、当初発表の製品では20~30MBとなっている。CPUコアとGPUコアが同じキャッシュメモリにアクセスすることでレイテンシーを抑制し、全体的なパフォーマンス向上を図ったという。

当初発表製品では、CPU直結のPCI Express 5.0バスを最大16レーン、PCI Express 4.0バスを最大4レーン利用できる。PCI Express 5.0バスは外部GPUや高速ストレージ(SSDなど)、PCI Express 4.0バスは高速ストレージでの利用を想定している。
メインメモリはDDR5規格(DDR5-4800における最大通信速度4800MT/s)とDDR4規格(DDR4-3200における最大通信速度3200MT/s)をサポートしている。チャネル数は最大2つで、容量は最大128GBとなる。ただし、実際に搭載できるメモリの規格や枚数は、組み合わせるチップセットやマザーボードによって変わる。

GPU付きモデルには、Xe-LPアーキテクチャベースのGPU「Intel UHD Graphics 770」が内蔵されている。
プロセスルールは Intel 7と名付けられた。これまで「10nm Enhanced SuperFin」と呼ばれていたもので、Intelは他社の7nm以上の性能を持つとしている。

消費電力の目安はTDPではなく、定格消費電力・最大消費電力に変わった。最上位モデルの Core i9-12900Kの最大消費電力は241Wである。
Intelによれば、Core i9-11900K を消費電力250Wで稼働した際の処理パフォーマンスを1とした場合に、Core i9-12900K は約4分の1の消費電力(65W)で同じ性能を発揮し、定格消費電力(125W)時で1.3倍、最大消費電力(241W)時で1.5倍のパフォーマンスをたたき出せるという。

2022年(令和4年)5月11日、モバイル向け第12世代インテル Core HX プロセッサーを発表した。定格消費電力(Processor Base Power)によって3シリーズに分かれ、最上位の Core i9-12950HXは定格消費電力55Wで、16コア/24スレッド、最大5GHz、GPUの実行ユニットは32基。定格消費電力が55Wのシリーズには、16コアから8コアまでのCore i9、Core i7、Core i5が並ぶ。
定格消費電力が45WのシリーズはHシリーズと呼ばれ、最上位の Core i9-12900HK は14コア/20スレッド、最大5GHz、GPUの実行ユニットは96基。このシリーズには、14コアから8コアまでのCore i9、Core i7、Core i5が並ぶ。
定格消費電力が28W以下のPシリーズとUシリーズには、消費電力が最小の Core i7-1260U は10コア/12スレッド、最大4.7GHz、GPUの実行ユニットは96基。このシリーズには、14コアから5コアまでのCore i7、Core i5、Pentium、Celeronが並ぶ。

第13世代:Raptor Lake

Raptor Lakeのダイ写真
Raptor Lakeのダイ写真
2022年(令和4年)9月、インテルはRaptor Lake (ラプターレイク)  を発表した。
Pコアの最大クロック数を5.8GHzにまで引き上げることで、前世代の製品に比べシングルスレッド性能は最大15%、Eコアの数を16コアに増やすことでマルチスレッド性能は最大41%向上したという。
また、L2キャッシュの容量を、Pコアは1基当たり2MBに、Eコアは1ユニット(4基)当たり4MBに増量した。L3キャッシュは最大36MBに増量した。より高速はメモリモジュールDDR5-5600をサポートする。
プロセスルールは前世代と同じ Intel 7 で、CPU自体の最大消費電力は高くなっているが、Core i9-13900K は65Wの電力で Core i9-12900K のフルパワー(241W)と同等のマルチスレッド性能を発揮できるとしている。
PコアとEコアに作業を割り振る Intel Thread Director(ITD)に改良が加えられ、Windows 11 2022 Updateで改良されたタスクスケジューラーと組み合わせることでバックグラウンドタスクの処理効率が向上するという。
チップセットとマザーボードや無線LAN/Bluetoothモジュールは、前世代のものが流用可能としている(UEFIを更新しなければならない場合がある)。
新しく登場するチップセット Intel Z790 では、次の改良が行われている。
  • チップセット側のPCI Express 4.0バスのレーンを8つ追加
  • USB 3.2 Gen 2x2ポートの最大数の増加
  • DMI 4.0バスの実効通信速度の改善

ブランド名変更

Intel Core Processors
Intel Core Processors
2023年(令和5年)6月15日、インテルはクライアント向けCPUのブランド名を2023年(令和5年)後半に刷新することを発表した。初めて Intel 4プロセスを採用し、AIエンジンを実装して大きく刷新する第14世代Coreプロセッサ(開発コード名:Meteor Lake)から適用される見込みだ。
Intel Core Processors
Intel Core Processors
まず、プロセッサの名称の「i」を削除し、Core 3Core 5Core 7Core 9のように変わる。そして、「第○世代」という表記を廃止し「Core 5プロセッサ ##xxxH」といった表記に改める(##には世代数が入る)。
Intel Core Ultra Processors
Intel Core Ultra Processors
さらに、Core 5プロセッサ以上のモデルの一部が、Core Ultraプロセッサになる。Ultraの基準は示されていない。
Intel Evo Edition
Intel Evo Edition
第10世代Coreプロセッサから導入したノートPCの認証プログラム「Project Athena」は、第11世代Coreプロセッサにおいて「Intel Evoプラットフォーム」という愛称が付けられたが、これが、Intel Evo Editionプラットフォームに改称される。
IIntel vPro
Intel vPro
企業向けの管理/セキュリティ機能「Intel vProプラットフォーム」は、第12世代Coreプロセッサで導入された「Essentials(一部機能のみ対応)」と「Enterprise(全機能対応)」の2クラス制を維持しつつ、専用のデバイスラベルが導入される。

第14世代:Raptor Lake Refresh

Raptor Lake Refreshのダイ写真
Raptor Lake Refreshのダイ写真
2023年(令和5年)10月、インテルはRaptor Lake Refresh (ラプターレイクリフレッシュ)  を発表した。第13世代:Raptor Lakeのリフレッシュ版で、アーキテクチャは第13世代と変わらず、対応ソケットやチップセットも同じものが利用できる。まもなくAMDがアーキテクチャを刷新した Zen 5を搭載した Ryzen 8000シリーズを発表する予定で、これを迎え撃つためにオーバークロック耐性を高めた。その結果、ブランド名が変更になる Meteor Lakeは2024年度にずれ込みそうだ。

Pコアの最大6GHz駆動を最上位モデルでも実現したほか、他のモデルでもPコアやEコアの最大クロックを100~200MHzほど引き上げている。さらに、Intel XMP(Extreme Memory Profile)対応DDR5メモリモジュールにおいて毎秒8000MT超のプロファイルに対応するなど、オーバークロック機能を強化した。液体ヘリウムで冷却することで、Pコアのクロック周波数は9043.92MHzを達成し、これまでの世界記録だった8734.02MHzを大きく上回り世界記録を達成した。
ミドルハイ市場向けの Core i7-14700K,KF は、現行の Core i7-13700K,KFが8基のPコアと8基のEコアを備える16コアのCPUだが、Core i7-14700K,KFではEコアが4基増えた計20コアのCPUへとパワーアップした。これにともない、L3キャッシュやスレッド数も増やしている。
こうした強化にもかかわらず、TDP(Thermal Design Powe;熱設計消費電力)は第13世代の同等品と変わらない。

Raptor Lake Refreshでは、外部モジュールを併用することで、最新の Wi-Fi 7(IEEE 802.11be規格の無線LAN)、Bluetooth 5.4Thunderbolt 5 をサポートする。

AMDに対抗するために、Intel Application Performance Optimization(APO)と呼ばれるゲーム性能を向上させる機能が追加された。APOは、システムの動作を動的に最適化する Intel Dynamic Tuning Technology(DTT)の一部として導入した。DTTは、アプリの動作を監視しながら、ファームウェアと協調しながら電力や熱の配分などの最適化をリアルタイムに行う仕組みだが、これをゲームアプリに適用し、プレイ中のフレームレートを向上するなどの効果を期待できるとしている。ただし、恩恵を受けるのはAPO対応ゲームのみである。

Raptor Lake Refreshには、Intel純正オーバークロックツール「Extreme Tuning Utility」(XTU)に自動オーバークロック機能「AI Assist」が実装される。IntelがCPU固有のオーバークロック時の挙動を学習させたAIモデルを使って、CPUに最適なオーバークロックを自動で行ってくれるという機能だ。ユーザーにオーバークロック経験がなくても、AIが賢くオーバークロックしてくれるという。

CPUの歴史

発表年 メーカー CPU名 ビット数 最大クロック
1971年インテル40044bit750KHz
1974年インテル80808bit3.125MHz
1975年モステクノロジーMOS 65028bit3MHz
1976年ザイログZ808bit20MHz
1978年インテル808616bit10MHz
1979年モトローラMC68098bit2MHz
1979年ザイログZ800016bit10MHz
1980年モトローラMC6800016bit20MHz
1984年インテル8028616bit12MHz
1985年インテル8038632bit40MHz
1985年サン・マイクロシステムズSPARC32bit150MHz
1986年MIPSR200032bit15MHz
1987年ザイログZ28016bit12MHz
1987年モトローラMC6803032bit50MHz
1989年インテル8048632bit100MHz
1991年MIPSR400064bit200MHz
1990年モトローラMC6804032bit40MHz
1993年インテルPentium32bit300MHz
1994年IBM, モトローラPowerPC 60332bit300MHz
1995年サイリックスCyrix Cx5x8632bit133MHz
1995年AMDAm5x8632bit160MHz
1995年サン・マイクロシステムズUltraSPARC64bit200MHz
1999年IBM, モトローラPowerPC G432bit1.67GHz
1999年AMDAthlon32bit2.33GHz
2000年インテルPentium 432bit3.8GHz
2001年インテルItanium64bit800MHz
2003年AMDOpteron64bit3.5GHz
2003年インテルPentium M32bit2.26GHz
2006年SCE,ソニー,IBM,東芝Cell64bit3.2GHz
2006年インテルCore Duo32bit2.33GHz
2006年インテルCore 2 Duo64bit3.33GHz
2008年インテルCore i9/i7/i5/i364bit5.8GHz
2017年AMDRyzen64bit5.7GHz
2020年AppleM1/M264bit3.49GHz

参考サイト

(この項おわり)
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