Core i シリーズは10年以上のロングラン製品

2008年11月発売開始
Core i9-11900K
Core i9-11900K
Core 2 に続く CPU として、インテルは 2008 年(平成 20 年)11 月、Nehalem (ネハレム)  と呼ぶマイクロアーキテクチャを搭載した CPU の販売を開始した。最初はサーバ向け Xeon ブランド(コア数 4 または 8)と、ハイエンド・デスクトップ PC 向けの Core i7(コア数 4)がリリースされた。
2021 年(令和 3 年)3 月現在、第11 世代(開発コード:モバイル向け Tiger Lake、デスクトップ向け Rocket Lake-S)が販売されている。

Core i シリーズ

  アーキテクチャ CPU型番 コア数 プロセスルール トランジスタ数 内蔵GPU
1 Nehalem
(Westmere)
Core i7 950, Core i5 670など3桁 2~6 45~32nm 約7.7億 ---
2 Sandy Bridge Core i7-2600, Core i3-2100など2000番台 2~4 32nm 約10億 HD 2000~3000
3 Ivy Bridge Core i7-3770, Core i3-3220など3000番台 1~4 22nm 約11.6億 HD 2500~4000
4 Haswell Core i7-4770, Core i3-4370など4000番台 2~4 22nm 約14.8億 HD 4200~5200
Iris Pro 5100~5200
5 Broadwell Core i7-5775C, Core i3-5020Uなど5000番台 2~10 14nm 約19億 HD 5500~6000
Iris Pro 6000~6200
6 Skylake Core i7-6700, Core i3-6300など6000番台 2~18 14nm HD 510~530
Iris 540~550
7 Kaby Lake Core i7-7700, Core i3-7300など7000番台 2~4 14nm HD 510~530
8 Coffee Lake Core i7-8700, Core i3-8100など8000番台 4~6 14nm UHD 630
9 Coffee Lake
Refresh-S
Core i9-9900K, Core i7-9700Kなど9000番台 4~8 14nm UHD 630
10 Comet Lake Core i9-10900K, Core i7-10700Kなど10000番台 4~10 14nm++ UHD 630
11 Tiger Lake Core i7-1160G7, Core i5-1130G7など1100番台 2~10 10nm++ Iris Xe
Rocket Lake-S Core i9-11900K,Core i7-11700Kなど11000番台 4~8 14nm++ UHD 730~750

第1世代:Nehalem

Nehalemのダイ
Nehalemのダイ
Nehalem ではチップデザインを根本的に見直し、機能ブロック毎にモジュール化された。これにより、マルチコア CPU の設計が容易になった。
CPU には 3 段階のキャッシュメモリが搭載された。CPU に最も近い 1 次キャッシュはデータと命令キャッシュの 2 つで、それぞれが 32KB。2 次キャッシュは CPU コアごとに 256KB。3 次キャッシュは共有で約 8MB ある。80286 のメインメモリが最大 16MB だったことを思い起こすと、隔世の感がある。
Nehalemのブロック図
Nehalemのブロック図
Nehalem では、CPU にメモリコントローラを内蔵した。CPU が直接メモリにアクセスすることが可能になり、またトリプルチャネルに対応したことから、メモリアクセス速度が向上する一方、メモリチップの進化に合わせて CPU を変えていくという運命を背負うことになる。

CPU とチップセット間のインターコネクトバスが、従来のシステムバス(FSB)から、QPI(QuickPath Interconnect)に変更された。QPI は、PCI Express と同様、シリアルインターフェイスで、上り下りそれぞれに 20bit ずつの帯域を持ち、25.6GB/秒のデータレートを実現している。
HTテクノロジー
HTテクノロジー
Nehalem では、Pentium 4 に搭載されていた HT(Hyper-Threading)テクノロジーが復活した。HT により、物理4 コアを搭載する Core i7 プロセッサは、ソフトウェアからは 8 コアあるように見せることができる。
また、32 ビットの Core アーキテクチャに備わっていたマクロフュージョンが 64 ビットでもサポートされた。さらに、環境に応じて自動でクロックアップするターボ・ブースト・テクノロジーが搭載された。これらの改良により、処理速度が向上した。
Core i3/i5/i7
Core i3/i5/i7
2009 年(平成 21 年)9 月には、メインストリーム PC 向けに開発された Core i5 シリーズが登場する。Core i7 と同じ 4 コアだが、HT が無効化されている。
2010 年(平成 22 年)1 月には、コストパフォーマンスを重視する廉価版PC 向けに開発された Core i3 シリーズが登場する。Core i5 に比べ、2 コアに減らされ、ターボ・ブースト・テクノロジーが省かれている。
インテルのTick-Tock戦略
インテルのTick-Tock戦略
インテルは、Core Duo から Tick-Tock (チック・タック)  と呼ばれる開発戦略をとっている。
ムーアの法則に基づいて、約 2 年ごとに製造プロセスの微細化を行っているが、回路設計はそのままに新たなプロセスルールを導入した世代を Tick、プロセスルールはそのままに新たな回路設計を導入した世代を Tock として、毎年 TickTock を交互に繰り返している。これにより、新製品を途切れなくリリースするとともに、品質問題を開発にフィードバックしやすくなる。
Nehalem は Tock で、2010 年(平成 22 年)に登場する WestmereTick となる。

第2世代:Sandy Bridge

Sandy Bridgeのダイ
Sandy Bridgeのダイ
2011 年(平成 23 年)1 月、Intel HD Graphics と呼ぶ GPU を内蔵した Sandy Bridge (サンディブリッジ)  が発売された。
第1 世代の最後発CPU にも搭載されていたが、L3 キャッシュに接続したり、動画のハードウェアエンコード(Intel Quick Sync Video)を行うメディアエンジンを統合するなど、高速化が図られている。
2011 年(平成 23 年)11 月には、ハイエンドユーザー向けに 6 コアを搭載した Core i7-3960X が追加された。
プロセスルールは 42nm から 32nm 微細化され消費電力が減ったことから、動作周波数が 3GHz を超える製品が登場した。

Sandy Bridgeでは、従来の SSE では 128 ビット幅だった SIMD レジスタが 256 ビット幅に拡張され、1 クロックで 256 ビット演算が可能となった。処理によっては最大 2 倍のパフォーマンスを発揮する。

Intel HD Graphics により、3D 描画が 2 倍以上に高速化され、さらに従来より高速かつ低 CPU負荷でビデオのエンコード/デコードが可能になった。

第3世代:Ivy Bridge

Core i7-3770K
Core i7-3770K
2012 年(平成 24 年)4 月、世界初の 3 次元トライゲート・トランジスターと 22nm プロセスを採用した Ivy Bridge (アイビーブリッジ) Tick)が発売され、内蔵GPU の性能強化と消費電力の低下が話題となった。
型番の末尾に U が付くモデルは TDP が 17W まで下がり、インテルが提唱する薄型ノート PC「Ultrabook」に搭載された。
3次元トライゲート・トランジスター
3次元トライゲート・トランジスター
3 次元トライゲート・トランジスターは、その名が示すとおり、トランジスタの構造を 2 次元から 3 次元にすることで、プロセスの微細化によって無視できなくなったリーク電流(漏れ電流)を抑えることが可能になるというもの。消費電力を同じに設定すれば性能は 37%向上し、性能を同等に設定した場合は消費電力が半減するという。
Ivy Bridgeのダイ写真
Ivy Bridgeのダイ写真
ダイ写真を見ると、Sandy Bridge より GPU の占める割合がかなり大きくなっており、その性能は約 2 倍になるという。
また、インテル製GPU として初めて、GPGPU 機能(GPU を演算処理に応用)がサポートされた。
Intel 7シリーズ・チップセット
Intel 7シリーズ・チップセット
チップセットである Intel 7 シリーズは、高速データ転送規格の USB 3.0 や Thunderbolt を標準でサポートし、3画面出力にも対応する。

また、セキュア・キーや OS ガードなど、個人情報保護や個人認証を行うセキュリティー機能が新たに追加された。

第4世代:Haswell

Haswell
Haswell
2013 年(平成 25 年)8 月、Haswell (ハズウェル) Tock)が発売された。
当初、ベンチマークで Ivy Bridge とほとんど変わらないスコアが出たことから、散々な船出となったが、2014 年(平成 26 年)にリリースされた Haswell Refresh では、内蔵GPU によるグラフィック処理を最大 2 倍に高速化した。また、L2 キャッシュの構造を見直し、帯域を倍増することで、同クロックの Ivy Bridge に比べて 10%の処理速度向上が望める。
Haswell Refresh の内蔵GPU は、Ivy Bridge の延長線上にある Intel HD graphics と、内蔵GPU の演算ユニットを 2.5 倍に増設した Intel Iris graphics の 2 系統5 レベルに分かれた。この分類が複雑で、市場に誤解を招いた感は拭えない。

省電力性能がさらに向上した。
アイドル時の省電力機能に C6/C7/C8/C9/C10 ステートが追加され、数が増えるにつれアイドル時の電力消費が低減され、C10 ステートでは消費電力が 45mW程度にまで抑えられる。ただし、数が増えるにつれ通常状態に復帰するのに時間がかかるという制約もある。
NehalemからHaswellまで
NehalemからHaswellまで
Haswellのダイ写真
Haswellのダイ写真
ダイ写真を見ると、Ivy Bridge に引き続き GPU の占める割合が大きくなっており、長細くなっている。上の写真の通り、ヒートスプレッダを取り除くと、その違いがわかる。

第5世代:Broadwell

Broadwell
Broadwell
2014 年(平成 26 年)9 月、Broadwell (ブロードウェル) Tick)が発売された。
CPU 性能は Haswell とほとんど変わらないものの、22nm から 14nm に微細化したことで得られた実装面積を GPU 強化に充て、省電力化することで高圧縮動画の連続再生でもバッテリー駆動時間を長くすることに成功した。

第6世代:Skylake

Skylakeのダイ写真
Skylakeのダイ写真
2015 年(平成 27 年)8 月、Skylake (スカイレイク) Tock)が発売された。
Skylake は、製品種類が豊富なのが特徴だ。インテルは、最初に発表した Core i7-6700K:blue], Core i5-6600k に続き、46製品を一挙に発表した。
Core i9-7980XEのダイ写真
Core i9-7980XEのダイ写真
さらに 2017 年(平成 29 年)7 月には、コア数 10~18、スレッド数 20~36 の Core i9 シリーズ を発売開始した。
  • Skylake-S:デスクトップ PC 向け
  • Skylake-H:高性能ノート PC 向け
  • Skylake-U:薄型ノート PC 向け
  • Skylake-Y:タブレットおよび薄型ノート PC 向け(Core m ブランド)
Core i9/i7/i5/i3
Core i9/i7/i5/i3
内蔵GPU は DirectX 12 対応となり、メディア再生時のデコード処理を行うハードウェアを強化する一方で、消費電力を削減した。4K ビデオの 60Hz 出力に対応している。
メモリは、DDR3 SDRAM の約 2 倍の伝送速度をもつ DDR4 SDRAM に対応。また、DDR3 SDRAM(DDR3L)にも対応している。

第7世代:Kaby Lake

Kaby Lakeのダイ写真
Kaby Lakeのダイ写真
2016 年(平成 28 年)8 月、Kaby Lake (カビーレイク) が発売された。10nm プロセスの開発が遅れたため、Tick-Tock 戦略を諦め、14nm プロセスを改良する形で、消費電力を維持したままクロックを 12%向上させている。

内蔵GPU のメディアエンジンが強化され、10bit の H.265/HEVC のハードウェアデコード/エンコード、VP9 のハードウェアエンコードができるようになった。HDCP 2.2 にも対応している。
Windows 10
Windows 10
マイクロソフトは、Kaby Lake をサポートするのは Windows 10 だけで、Windows 7 以前はサポートしないという方針を明らかにした。

第8世代:Coffee Lake

Coffee Lakeのダイ写真
Coffee Lakeのダイ写真
2017 年(平成 29 年)8 月、Coffee Lake (コーヒーレイク) が発売された。14nm プロセスをさらに改良し、前モデルでコア数を 2 基増加させた。つまり、Core i7/i5 は 6 コアに、Core i3 は 4 コアとなった。
CPU コアそのものや内蔵GPU は Kaby Lake 世代とほとんど変わりない。

第9世代:Coffee Lake Refresh-S

Coffee Lake Refresh-Sのダイ写真
Coffee Lake Refresh-Sのダイ写真
2018 年(平成 30 年)10 月、Coffee Lake Refresh-S が発売された。
プロセス微細化のめどが立たず、Coffee Lake の 14nm プロセスのままで、内蔵CPU も Intel UHD Graphics 630 のままだが、Core i7 と Core i9 は物理8 コアに、Core i5 は物理6 コアと、コア数が増えた。ただし、ハイパースレッディングが有効なのは Core i9 のみである。
これは同年 4 月に発売された 8 コア 16 スレッド AMD製 Ryzen 7 2700Xに対抗するためであろう。
ハードウェア脆弱性の Meltdown V3(Rogue Data Cache Load)と V5(L1 Terminal Fault)にハードウェアレベルで対応した。

CINEBENCH R15 で比較すると、Ryzen 7 2700X のスコアは Core i7-9700(8 コア 8 スレッド)と Core i9-9900K(8 コア 16 スレッド)の中間となる。
総合ベンチマーク PCMark 10 で比較すると、Core i5-9600K(6 コア 6 スレッド)以上の第9 世代 CPU は Ryzen 7 2700X のスコアを上回る結果となっている。

第10世代:Comet Lake

Comet Lakeのダイ写真
Comet Lakeのダイ写真
2019 年(令和元年)8 月、Comet Lake が発売された。翌2020 年(令和 2 年)4 月、デスクトップ向けの Comet Lake-S が発売開始。
CPU コアは Cascade Lake と呼ばれる新マイクロアーキテクチャで、深層学習に最適化された命令セットを搭載している。14nm プロセスに戻すことで、AMD製品に対抗できるほど大幅な価格性能比を向上させた。

全ての Core プロセッサがハイパースレッディングに対応しており、シングルコア稼働に最適化され、動作クロックは最大 5.3GHz に達する。その分、TDP は最大 165W となり、この点で AMD との差は埋まっていない。内蔵GPU も第9 世代のままだ。CPU ソケットは新たに LGA1200 となり、従来の LGA1151 とは互換性がなくなっている。

Core i9 と Core i7 で、より高速な DDR4-2933 メモリをサポートした。
対応チップセットは Intel 400 シリーズで、2.5GbE 対応コントローラー Intel i225-V や、Wi-Fi 6:blue(IEEE 802.11ax)対応の無線LAN モジュール AX201 をサポートした。PCI Express は 3.0 のままで、チップセット側が 24 レーン、CPU と合わせてプラットフォーム全体で 40 レーンとなっている。

第11世代:Tiger Lake

Tiger Lakeのダイ写真
Tiger Lakeのダイ写真
2020 年(令和 2 年)9 月、Tiger Lake が発売された。
CPU コアは、前世代の Sunny Cove アーキテクチャを改良した Willow Cove で、10nm プロセス、内蔵GPU は Xe-LP である。L2 キャッシュが従来製品の 512KB から 1.25MB へ、L3 キャッシュも 12MB/24MB に増強されている。
従来比で CPU 性能が 20%向上し、iGPU 性能は 2 倍、AI 処理性能に関しては 5 倍になったとしている。Wi-Fi 6 はもちろん、Thunderbolt 4、PCI Express 4.0(PCIe Gen 4)といった最新規格にも対応している。
SuperFin という新技術を投入し、高性能トランジスタを使うことで性能を上げた。Sunny Cove が 3.9GHz で動作するところを、同じ電圧で約 1GHz ほど上回る 4.8GHz で駆動可能となっている。
TDP 枠により、UP3(TDP 15W)、UP4(TDP 9W)に分類されている。

GPU は、モバイルだけでなく、HPC もカバーできるように単体 GPU として開発した GPU アーキテクチャ Xe に基づく統合型 GPU「Xe-LP」が内蔵されている。Xe-LP は実行エンジンが従来モデルの 64 基から 96 基に増やされ、16MB の L3 キャッシュを内蔵しているなどの内部リソースの強化が図られ、Ice Lake に内蔵されている Gen 11 GPU の 2 倍の性能を実現している。なお、Xe-LP の正式名称は「Intel Iris Xe Graphics」となり、EU が 48 基と半分になるローエンドモデルは従来と同じく「Intel UHD Graphics」となる。
Rocket Lake-Sのダイ写真
Rocket Lake-Sのダイ写真
2021 年(令和 3 年)3 月、デスクトップ向け Rocket Lake-S が販売開始された。第10 世代と同じく 14nm プロセスに据え置かれ、最大 8 コア 16 スレッド構成とコアとスレッドが削減されている。しかし、モバイル向け第10 世代 Core プロセッサ(Ice Lake)CPU コアのアーキテクチャを 14nm プロセス用に再設計した Cypress Cove を導入することで、クロック当たりの命令処理数を引き上げ、Comet Lake-S 比で Rocket Lake-S は IPC が最大約 19%向上しているという。
また、Comet Lake-S で導入された Intel Turbo Boost Max Technology 3.0(TBT 3.0)、Intel Thermal Velocity Boost Technology(TVB)など、高クロック駆動を実現するための機能は引き継いでいる。
Comet Lake-S に無い機能として、CPU直結の PCI Express バスが最大レーン数が 16 から 20 に拡大され、より高速な PCI Express 4.0 をサポートした。メインメモリは、全てのモデルで DDR4-3200(PC4-25600)規格と DDR4-2933(PC4-23400)規格をサポートする。
Rocket Lake-S の CPU ソケットは、Comet Lake-S と同じ LGA 1200 である。PCI Express 4.0 と DDR4-3200 を利用するには Intel 500 シリーズチップセットが必要となる。
内蔵GPU は Tiger Lake と同じ Xe アーキテクチャとなったが、実行ユニット数は 24~32 基と少なめで、Intel UHD Graphics 730 または 750 と呼ばれる。

参考サイト

(この項おわり)
header