Zilog Z280 は画期的だが商業的に失敗したCPU

1987年リリース
Zilog Z280
Zilog Z280
Z280 は、ザイログ(Zilog)が Z80 の機能拡張としてリリースした16ビットCPUである。

Z80 とオブジェクトレベルで互換があり、周辺チップも利用できたのだが、PC用には V3080286 が普及しており、商業的には失敗した製品だった。
Z80 と比べ、乗除算命や相対分岐命令が拡張されており、MMUを内蔵することで 80286 と同じ16Mバイトという広大なメモリ空間が利用できることから、ワンボードに組み込んで、MZ-2521 からRS-232C通信で利用できるようにした。プログラムは Small-C を使って作った。
インテルの32ビットCPU 80486(1989年)のように、クロックを内部で分周し、2倍、4倍にすることができるが、最大動作周波数は12MHzにとどまり、残念ながら、その後に購入した ダイナブック J-3100GS(80C286 15MHz)よりも遅かった。

ただ、ハードウェアとしては、80286 と同様のプロテクトモードや特権命令に加え、命令パイプライン、256バイトのキャッシュメモリ、メモリ転送のバーストモードなどを備えた画期的な設計だった。マルチタスク、マルチプロセッサ機能を備えている。
また、16ビット・タイマを3個、4チャンネルDMACとUARTを内蔵しており、起動時の設定でZ80もしくはZ8000(Z-BUS)のバスを利用することができる。

Z80 が登場してから10年以上経過しており、組み込み用としてリリースすれば売れたかもしれないが、汎用CPUを指向したがために、不幸な結果となってしまった。
ザイログは1984年(昭和59年)、Z380 という32ビットCPUをリリースするが、これも失敗。1998年(平成10年)、テキサス・パシフィック・グループに買収された。
2001年(平成13年)、Z80 とバイナリ互換でメモリ空間を16Mバイトに拡張した組み込み用CPU eZ80 をリリースし、これは商業的に成功し、10年以上売れ続けている。
ザイログ自身は、2010年(平成22年)、IXYS Corporationに買収され、2017年(平成29年)、リテルヒューズの傘下に入った。

主要スペック

項目 仕様
メーカー Zilog
発売開始 1987年
トランジスタ数 不明
データバス 16ビット
アドレスバス 24ビット
物理メモリ 16MB
CPUクロック 10~12MHz

参考書籍

表紙 ザイログZ80伝説
著者 鈴木哲哉
出版社 ラトルズ
サイズ 単行本
発売日 2020年08月24日頃
価格 2,398円(税込)
ISBN 9784899774815
約半世紀に渡ってマニアを魅了し続けるZ80の、あの話とかこの話とか。
 

CPUの歴史

発表年 メーカー CPU名 ビット数 最大クロック
1971年インテル40044bit750KHz
1974年インテル80808bit3.125MHz
1975年モステクノロジーMOS 65028bit3MHz
1976年ザイログZ808bit20MHz
1978年インテル808616bit10MHz
1979年モトローラMC68098bit2MHz
1979年ザイログZ800016bit10MHz
1980年モトローラMC6800016bit20MHz
1984年インテル8028616bit12MHz
1985年インテル8038632bit40MHz
1985年サン・マイクロシステムズSPARC32bit150MHz
1986年MIPSR200032bit15MHz
1987年ザイログZ28016bit12MHz
1987年モトローラMC6803032bit50MHz
1989年インテル8048632bit100MHz
1991年MIPSR400064bit200MHz
1990年モトローラMC6804032bit40MHz
1993年インテルPentium32bit300MHz
1994年IBM, モトローラPowerPC 60332bit300MHz
1995年サイリックスCyrix Cx5x8632bit133MHz
1995年AMDAm5x8632bit160MHz
1995年サン・マイクロシステムズUltraSPARC64bit200MHz
1999年IBM, モトローラPowerPC G432bit1.67GHz
1999年AMDAthlon32bit2.33GHz
2000年インテルPentium 432bit3.8GHz
2001年インテルItanium64bit800MHz
2003年AMDOpteron64bit3.5GHz
2003年インテルPentium M32bit2.26GHz
2006年SCE,ソニー,IBM,東芝Cell64bit3.2GHz
2006年インテルCore Duo32bit2.33GHz
2006年インテルCore 2 Duo64bit3.33GHz
2008年インテルCore i9/i7/i5/i364bit5.8GHz
2017年AMDRyzen64bit5.7GHz
2020年AppleM1/M264bit3.49GHz

参考サイト

(この項おわり)
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