![]() |
宇宙が見える数学 | ||
著者 | 小笠 英志 | ||
出版社 | 講談社 | ||
サイズ | 新書 |
![]() ![]() |
|
発売日 | 2024年10月17日頃 | ||
価格 | 1,100円(税込) | ||
ISBN | 9784065375990 |
偉大な理論物理学者のエドワード・ウィッテンは、結び目理論が宇宙論や超弦理論と非常に関係が深いということを発見しました。彼は超弦理論を専門とする物理学博士ですが、ノーベル物理学賞ではなくて数学の賞であるフィールズ賞を受賞しています。
概要


トーラス

テッセラクト
第3章では、「テッセラクト(tesseract)」「4次元キューブ(4-dimensional cube)」などと呼ばれる4次元立方体の展開図は、3次元立方体を組み合わせた形になる――これは3次元立方体の展開図から類推できることだ。
第4章では、宇宙の果てを考えるのに、傍聴する3次元球面 $ S^3 $ を持ち出す。これは、じつは中身が空の4次元立方体(先ほどのテッセラクト) $ \mathbb{R}^4 $ のなかで
$$ \{ (x, y, z, t) \mid x^2 + y^2 + z^2 + t^2 \le 1 \} $$
とあらわすことができる。
第4章では、宇宙の果てを考えるのに、傍聴する3次元球面 $ S^3 $ を持ち出す。これは、じつは中身が空の4次元立方体(先ほどのテッセラクト) $ \mathbb{R}^4 $ のなかで
$$ \{ (x, y, z, t) \mid x^2 + y^2 + z^2 + t^2 \le 1 \} $$
とあらわすことができる。

ボーイ・サーフェス
第5章では、曲面が2次元なのに5次元が必要になる不思議な図形「ボーイ・サーフェス」ととりあげる。
「標準理論」と呼ばれる素粒子論(場の量子論・ゲージ理論)はかなり完成しているが、重力がゼロを前提としている。ブラックホールの近くではどうなるのか。それを第6章で考える。超弦理論が、それに近づいているとされているが、まだ完全なモデルではない。こういうモデルを「トーイ・モデル(toy model)」と呼ぶ。
「標準理論」と呼ばれる素粒子論(場の量子論・ゲージ理論)はかなり完成しているが、重力がゼロを前提としている。ブラックホールの近くではどうなるのか。それを第6章で考える。超弦理論が、それに近づいているとされているが、まだ完全なモデルではない。こういうモデルを「トーイ・モデル(toy model)」と呼ぶ。

第7章・8章では宇宙の形のまとめに入る。
宇宙の条件は、
宇宙の条件は、
- 宇宙のどの点も、その点のまわりは、小さい3次元空間だ。
- どこまで行っても境界はない。
- 有限の大きさを持つ。
レビュー

宇宙は大きさは有限だが境界はない――思い返してみれば、この宇宙モデルをすんなり受け入れられたのは、UFOブームの延長線上で、数学で立体図形を扱うよりも早くクラインの壺のような謎造型に出会っていたからだろう。最初に読んだトポロジー本は、たしかブルーバックスの『やさしいトポロジー』だったと思う。
4次元立方体が登場するSF作家ロバート・A・ハインラインの『歪んだ家』は私も読んだが、本書の説明を読んで、ようやくその仕組みが理解できた。『歪んだ家』は数学的にも正しい。
私は図形(幾何学)は苦手なのだが、代数は得意なので、3次元球面 $ S^3 $ を方程式で $ x^2 \ + \ y^2 \ + \ z^2 \ + \ w^2 \ = \ R^2 $ と書いてくれた方が助かる。2次元球面の方程式から容易に類推ができるからだ。第2章で唐突に登場する「3次元空間」の $ \mathbb{R}^3 $ は実数空間を表す数学の記号だ。これは分かりやすい。

波形やLLMをやっていると、次元数が11になっても12になっても、それほど驚かないのだが、ただ「宇宙の形」となると、実際の図形(モデル)として表現できないだけに、なんとももどしかしい。ただ、われわれが知覚しているのは、宇宙を切り取ったほんの一部であることは確かだろう。残りは想像で埋めるしかない。
私は図形(幾何学)は苦手なのだが、代数は得意なので、3次元球面 $ S^3 $ を方程式で $ x^2 \ + \ y^2 \ + \ z^2 \ + \ w^2 \ = \ R^2 $ と書いてくれた方が助かる。2次元球面の方程式から容易に類推ができるからだ。第2章で唐突に登場する「3次元空間」の $ \mathbb{R}^3 $ は実数空間を表す数学の記号だ。これは分かりやすい。

波形やLLMをやっていると、次元数が11になっても12になっても、それほど驚かないのだが、ただ「宇宙の形」となると、実際の図形(モデル)として表現できないだけに、なんとももどしかしい。ただ、われわれが知覚しているのは、宇宙を切り取ったほんの一部であることは確かだろう。残りは想像で埋めるしかない。
(2025年8月16日 読了)
参考サイト
- 宇宙が見える数学:講談社
- 小笠英志@E43051281:Twitter(現・X)
- Eiji Ogasa
参考書籍
- 『宇宙線のひみつ』(藤井俊博,2025年7月)
- 『宇宙が見える数学』(小笠英志,2024年10月)
- 『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』(浅田 秀樹,2024年06月)
- 『多元宇宙(マルチバース)論集中講義』(野村泰紀,2024年03月)
- 『重力のからくり』(山田 克哉,2023年08月)
- 『宇宙・0・無限大』(谷口義明,2023年06月)
- 『時間の終わりまで』(ブライアン・グリーン/青木 薫,2023年05月)
- 『宇宙検閲官仮説』(真貝寿明,2023年02月)
- 『宇宙最強物質決定戦』(高水裕一,2023年02月)
- 『なぜ宇宙は存在するのか』(野村泰紀,2022年4月)
- 『宇宙を支配する「定数」』(臼田孝,2022年2月)
- 『物理学者、SF映画にハマる』(高水裕一,2021年10月)
- 『宇宙人と出会う前に読む本』(高水裕一,2021年7月)
- 『宇宙の終わりに何が起こるのか』(ケイティ・マック,2021年9月)
- 『宮沢賢治『銀河鉄道の夜』と宇宙の旅』(谷口義明,2020年07月)
- 『時間は存在しない』(カルロ・ロヴェッリ,2019年8月)
- 『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』(伊藤邦武,2019年8月)
- 『宇宙は「もつれ」でできている』(ルイーザ・ギルダー/山田 克哉/窪田 恭子,2016年10月)
- 『超巨大ブラックホールに迫る』(平林久,2017年02月)
- 『時間はどこで生まれるのか』(橋元淳一郎,2016年12月)
- 『真空のからくり』(山田 克哉,2013年10月)
- 『時間泥棒』(J.P.ホーガン,1995年12月)
- 『ホーキング 宇宙の始まりと終わり? 私たちの未来』(スティーヴン・ウィリアム・ホーキング/向井国昭,2008年10月)
- 『宇宙消失』(グレッグ・イーガン/山岸真,1999年08月)
(この項おわり)