西暦1685年 - 生類憐れみの令/貞享暦

犬公方と呼ばれた綱吉将軍/初めて日本人が暦を開発

生類憐れみの令

徳川綱吉
徳川綱吉
徳川幕府第5代将軍・徳川綱吉 (とくがわつなよし) は男子に恵まれなかった。それは生き物を大切にしないからだという隆光 (りゅうこう) 僧正の教えを信じ、生類憐れみの令 (しょうるいあわれみのれい) を出したと言われている。

綱吉は戌年生まれであったことから、とくにイヌを大切にした。江戸郊外(現在の中野区役所前)に16万坪の巨大な犬小屋を建て、多い時には8万頭の野犬を収容したという。その餌代に毎年9万8千両が費やされたといわれている。
その後、生類憐れみの令は生き物全部に適用され、人々は虫一匹殺せない状況に苦しめられた。

1709年(宝永6年)、徳川家宣 (とくがわいえのぶ) が6代将軍に就任して間もなく、生類憐れみの令は廃止された。
近年、綱吉の治世に対する見直しが始まっている。
もともと学問に明るかった綱吉の善政は「天和の治 (てんなのち) 」と呼ばれていた。
生類憐れみの令についても、最初は「殺生を慎むように」という内容だった。しかし、綱吉の治世が長くなるにつれ、将軍の機嫌を損ねないように気を回しすぎた役人たちの暴走だと考えられるようになっている。

綱吉は、3代将軍・家光の四男だった。兄とは違い、生まれながらの将軍ではなかった。だが、長男で4代将軍・家綱 (いえつな) が40歳で急逝し、思いがけず将軍職に就くことになる。
周囲に権威を示す必要があった綱吉は、儒学を奨励した綱吉は、武士の行動規範としての「礼」を第一におくことで、武威による軍事支配から儒学の徳目による君子政治に転換を図ろうとしたのである。

貞享暦

渋川春海
渋川春海
貞享元年10月29日(1684年12月5日)、初めて日本人が作成した和暦「貞享暦 (じょうきょうれき) 」が採用される。

それまで使われていた宣明暦 (せんみょいうれき) は、中国から伝わった暦で、862年(貞観4年)から823年間も使われていた。そのため誤差が蓄積し、旧暦の起点となる冬至が実際から2日ずれてしまっていた。これでは、日食予報もあてにならない。さらに各地で独自の民間暦が発行され、混乱を来していた。
江戸泰平の時代、ようやく幕府は改暦に着手することになる。幕府お抱えの囲碁棋士で、数学や暦学に通暁していた渋川春海 (しぶかわ しゅんかい) に白羽の矢が立てられた。
602年、百済出身の僧侶・観勒 (かんろく) が、日本へ初めて暦を伝えた。445年から中国で使われていた元嘉暦 (げんかれき) である。604年、聖徳太子によって採用された。
862年(貞観4年)に宣明暦が採用されるまで、朝廷は、いずれも中国で作成された5つの暦を採用した。

春海は、まず、1281年(弘安4年)に中国で制定された授時暦 (じゅじれき) の採用を幕府へ提案した。ところが、採用を検討している1675年(延宝3年)、授時暦は日食の予報を外した上、たまたま宣明暦の予報の方が近い結果を出してしまった。
授時暦には400年間の誤差が蓄積されていたことと、これまで日本と中国に1時間の時差があることが意識されていなかったためだ。春海は、天文学者にのみ閲覧が許されていた西洋情報を紐解き、授時暦の欠点に気づいた。
そこで、授時暦をベースに、独自の大和暦を開発し、幕府へ再提案した。これが貞享暦として採用されたのである。春海は、この功により幕府から新設の天文方に任命された。
貞享暦は、宝暦5年1月1日(1755年2月11日)、宝暦暦に改暦される。

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参考書籍

表紙 日本人なら身につけたい江戸の「粋」
著者 植月真澄
出版社 河出書房新社
サイズ 新書
発売日 2008年09月
価格 792円(税込)
rakuten
ISBN 9784309503462
制約だらけでも自由闊達に生きた江戸の人々と、物質的には豊かだが、閉塞感を感じている現代人。その違いは「粋」に生きているか否かにある。どうすれば「粋な人」になれるのか?江戸っ子の暮らしぶりから「粋のエッセンス」を抽出した、「野暮な奴」にならないための必読の書。
 
表紙 天文の世界史
著者 廣瀬 匠
出版社 集英社インターナショナル
サイズ 新書
発売日 2017年12月07日
価格 836円(税込)
rakuten
ISBN 9784797680171
西洋だけでなく、インド、中国、マヤなどの天文学にも迫った画期的な天文学通史。神話から最新の宇宙物理までを、時間・空間ともに壮大なスケールで描き出す。人類は古来、天からのメッセージを何とか解読しようと、天文現象を観察。天文学は、地域や文化の壁を越えて発達し、政治や宗教とも深く関わってきた。天体を横軸に、歴史を縦軸に構成。学者たちの情熱、宇宙に関する驚きの事実や楽しい逸話も織り込んでいる。
 
(この項おわり)
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