ローカルAI向けSoC「RTX Spark」

2026年10月 搭載ノートPC発売

概要

RTX Spark
RTX Spark
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RTX Spark は、NVIDIA が開発したWindows PC向けのSoCである。SoCとは、CPUやGPUなどの機能をまとめた半導体である。2026年(令和8年)5月31日に発表され、搭載ノートPCは同年10月16日に発売された。AIを手元のPCで動かすローカルAIを重視し、文書作成を支援するAIエージェントから映像制作、ゲームまでを1台で扱う設計である。

目次

RTX Sparkの特徴:CPUとGPUを一体化

RTX Spark
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RTX Sparkは、Arm系のGrace CPUとBlackwell RTX GPUを組み合わせる。CPUはOSやアプリの処理を進め、GPUは画像の描画やAIの計算を並列に実行する。MediaTekもCPUの共同設計に参加した。両者は高速接続技術NVLink-C2Cで結ばれ、別々の部品を寄せ集める構成よりも、データの受け渡しと電力効率を重視している。

公式開発資料に示された最上位構成のCPUは20コアで、高性能なCortex-X925が10コア、効率を重視したCortex-A725が10コアである。GPUは最大6,144基のCUDAコアと第5世代Tensor Coreを備える。CUDAコアが並列処理を担い、Tensor CoreはAIで多用する行列計算を加速する。

最大128GBのユニファイドメモリ

RTX Sparkのダイ(イメージ)
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大きな特徴が、CPUとGPUで物理メモリを共有するユニファイドメモリである。容量は最大128GB、メモリ帯域は300GB/s。帯域とは、一定時間に運べるデータ量のことである。大規模なAIモデルや3Dデータをメモリに載せやすく、CPU用とGPU用のメモリを分ける構成で生じるデータコピーも減らせる。

ただし、128GBのすべてをGPUが自由に使えるわけではない。Windows上では、GPU専用に予約する領域、CPUとGPUで共有する領域、CPUだけが使う領域に分かれる。OSや実行中のアプリもメモリを使うため、動かせるAIモデルの大きさは搭載容量だけで決まらない。

CPUとGPUがメモリを共有する考え方は、Appleシリコンにも見られる。RTX Sparkはこの仕組みにNVIDIAのCUDAやRTX技術を組み合わせ、Windows環境へ展開する製品と位置付けられる。

ローカルAIとAIエージェント

ローカルAIの利用イメージ
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AI演算性能は、FP4で最大1PFLOPSと公表されている。PFLOPSは毎秒1,000兆回の浮動小数点演算を表す単位で、FP4は数値を4ビットで表す方式である。数値の表現を小さくするとメモリ使用量を抑えられる一方、精度への影響にも配慮が必要になる。この性能値を、FP32など別の精度で測ったCPUやGPUの値とそのまま比べることはできない。
ローカルAIでは、文章の要約、コード作成、画像生成などの推論をPC上で実行する。さらにAIエージェントは、依頼された目標に向けて複数の手順を考え、ファイルやアプリを操作する。手元で完結する処理なら、入力データをクラウドへ送る機会を減らせ、利用量に応じたクラウド推論料金も抑えられる。ただし、モデルの能力や処理速度は、使うモデルと設定によって変わる。

ITmediaが紹介した説明会では、日常的な処理をローカルモデルへ、難しい処理をクラウドの高性能モデルへ振り分けるNeMo Switchyardも示された。つまり、ローカルAIを重視する製品でも、あらゆる機能がオフラインで完結するとは限らない。

AIにPCを操作させるには、操作できる範囲の管理も必要である。NVIDIAのOpenShellとMicrosoft Execution Containersは、エージェントの権限や実行環境を制御する仕組みである。ネットワーク通信やファイル操作を制限し、利用者の管理下で動かすために用意されている。

映像制作とゲームにも対応

RTX SparkはAI専用機ではない。Blackwell GPUによる3D描画、動画のハードウェア処理、光の反射を表現するレイトレーシングに対応する。AIを利用して描画を補うDLSS、反応の遅れを抑えるReflexなども利用できる。大容量メモリは、AIモデルだけでなく、複雑な3Dシーンを扱う制作作業にも役立つ。

発売時にはPhotoshopとPremiereのネイティブ対応ベータ版が提供された。ノートPCはASUS、Dell、HP、Lenovo、Microsoft、MSIから展開される。実際の性能、バッテリー持続時間、利用できる機能は、製品の構成やアプリの対応状況によって異なる。

Windows on Armの互換性

CPUの命令体系は、従来のIntelやAMDのPCで広く使われるx86系とは異なるArmである。Windows on Armは、Arm64向けに作られたアプリを直接実行し、既存のx86・x64アプリはエミュレーションで動かす。エミュレーションは命令を読み替える仕組みで、性能はアプリによって変わる。公式資料も、Arm向けアプリの方が性能やバッテリー効率で有利としている。

このため、GPUの性能だけでPC全体の使い勝手を判断せず、普段使うアプリや周辺機器、ゲームがRTX SparkとWindows on Armに対応しているかを確認する必要がある。

主要仕様

CPUのコア数について、ITmediaの記事は最大24コアの構成にも言及している。一方、NVIDIAの公開開発資料は最上位構成を20コアとしているため、本稿の仕様表は後者に基づく。最大値をすべての搭載PCが備えるわけではなく、購入時は各メーカーの製品仕様を確認する必要がある。

CPU最大クロックは搭載製品の公表値であり、全モデルに共通する値ではない。GPU最大クロックとFP32性能は、確認したNVIDIA公式仕様に記載がないため、他製品の数値や実機の観測値から補っていない。TDPは冷却・電力設計の指標で、常時その電力を消費するという意味ではない。
RTX Sparkの主要仕様(公表された最大構成、2026年10月17日確認)
項目内容
CPUArm v9.2、20コア(Cortex-X925×10+Cortex-A725×10)
CPU最大クロック最大4.1GHz(20コア版、ASUS ProArt P16の公式仕様)
GPUBlackwell RTX、最大6,144 CUDAコア、第5世代Tensor Core
GPU最大クロック確認したNVIDIA公式仕様には記載なし
GPU処理能力FP32(単精度)の理論演算性能は、確認したNVIDIA公式仕様には記載なし。FP4のAI演算性能は下記参照
CPU・GPU接続NVLink-C2C、転送速度600GB/s(CPU・GPU間。メモリ帯域とは別)
メモリ最大128GB、LPDDR5、256bit幅、CPU・GPUで物理メモリを共有
メモリ帯域300GB/s
AI演算性能FP4で最大1PFLOPS(メーカー公表値)
プロセスルールTSMC 3nm
TDPノートPC向け:45~80W、デスクトップPC向け:140W(SoCの設計指標。PC全体の実消費電力ではない)
OS基盤Windows on Arm
搭載ノートPC発売2026年10月16日

参考サイト

CPUの歴史

発表年 メーカー CPU名 ビット数 最大クロック
1970年Garrett
AiResearch
MP944 (軍用)20bit375KHz
1971年インテル40044bit750KHz
1974年インテル80808bit3.125MHz
1975年モステクノロジーMOS 65028bit3MHz
1976年ザイログZ808bit20MHz
1978年インテル808616bit10MHz
1979年モトローラMC68098bit2MHz
1979年ザイログZ800016bit10MHz
1980年モトローラMC6800016bit20MHz
1983年NECV3016bit16MHz
1984年インテル8028616bit12MHz
1985年インテル8038632bit40MHz
1985年インテルi96032bit100MHz
1985年サン・マイクロシステムズSPARC32bit150MHz
1985年エイコーンARM132bit6MHz
1986年MIPSR200032bit15MHz
1987年ザイログZ28016bit12MHz
1987年モトローラMC6803032bit50MHz
1988年MIPSR300032bit40MHz
1989年インテル8048632bit100MHz
1989年インテルi86032bit50MHz
1990年モトローラMC6804032bit40MHz
1991年MIPSR400064bit200MHz
1992年DECAlpha 2106464bit200MHz
1993年IBM, モトローラ, ApplePowerPC 60132bit120MHz
1993年インテルPentium32bit300MHz
1994年IBM, モトローラ, ApplePowerPC 60332bit300MHz
1995年サイリックスCyrix Cx5x8632bit133MHz
1995年AMDAm5x8632bit160MHz
1995年サン・マイクロシステムズUltraSPARC64bit200MHz
1999年IBM, モトローラPowerPC G432bit1.67GHz
1999年AMDAthlon32bit2.33GHz
2000年インテルPentium 432bit3.8GHz
2001年インテルItanium64bit800MHz
2003年AMDOpteron64bit3.5GHz
2003年インテルPentium M32bit2.26GHz
2006年SCE,ソニー,IBM,東芝Cell64bit3.2GHz
2006年インテルCore Duo32bit2.33GHz
2006年インテルCore 2 Duo64bit3.33GHz
2008年インテルCore i9/i7/i5/i364bit5.8GHz
2017年AMDRyzen64bit5.7GHz
2020年AppleAppleシリコン64bit3.49GHz
2023年インテルCore Ultra 9 / 7 / 564bit5.1GHz
2026年富士通FUJITSU-MONAKA64bit3.8GHz
2026年NVIDIARTX Spark64bit4.1GHz
(この項おわり)
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