西暦1798年 - 『暦象新書』の出版

地動説やニュートン力学が知られる
志筑忠雄『暦象新書』
志筑忠雄『暦象新書』
長崎通詞の志筑忠雄 (しづき ただお) は、イギリス人ジョン・ケールが1725年(享保10年)にニュートン力学を解説した "Introductiones ad Veram Physicam et veram Astronomiam" を翻訳し、『暦象新書 (れきしょうしんしょ) 』を著す。上編は1798年(寛政10年)6月、中編は1800年(寛政12年)10月、下編は1802年(享和2年)10月に完成し、ニュートン力学などが紹介された。

本木良永、司馬江漢、志筑忠雄

宣明暦
宣明暦
日本では、唐から輸入した宣明暦 (せんみょうれき) を800年(延暦19年)にわたって使い続けていたが、江戸時代には実際の天文現象と大きくずれてしまっており、日食も月食も予測することができなくなっていた。渋川春海 (しぶかわ はるみ) は幕府に働きかけ、1684年(天和4年)に改暦を行った。八代将軍・吉宗は、さらに優れている西洋の暦法の導入を試みるが成功せず、1754年(宝暦4年)に土御門家が宝暦暦 (ほうりゃくれき) へ改暦したことで、かえって暦は劣化してしまった。
司馬江漢『天球図』
司馬江漢『天球図』
日本で最初にコペルニクスの地動説の存在を知った長崎通詞の本木良永 (もとき よしなが) は、その重要性を理解し、『和蘭地図略説』として翻訳した。この中で、良永は「惑星」という日本語を用いた。
和蘭地図略説』を読んだ日本初の銅版画家の司馬江漢 (しば こうかん) は、エッチング技術を活用し、地球図や天球図を発行し、啓蒙活動を行った。
た。
こうして西洋の天文学・物理学が本邦に紹介され、1797年(寛政9年)に高橋至時 (たかはし よしとき) 間重富 (はざま しげとみ) によって寛政暦が完成した。

一方、長崎通詞の志筑忠雄は『暦象新書』を著す過程で、「地動説」「重力」「求心力」「遠心力」という日本語を用いた。
また、
忠雄が独自にたどり着いた太陽系の形成仮説は、1955年(昭和30年)にイマヌエル・カントが提唱した仮説と遜色がなかった。コペルニクスが唱えた地動説が本邦に入ってくるまで250年が経過したが、太陽系形成理論については45年の遅れに縮まった。

参考書籍

表紙 江戸の宇宙論
著者 池内 了
出版社 集英社
サイズ 新書
発売日 2022年03月17日頃
価格 1,034円(税込)
ISBN 9784087212068
今やノーベル物理学賞を得るに至った日本の天文学。そのルーツは江戸期の「天才たち」の功績にまで遡る。「重力」「遠心力」「真空」など現在でも残る数多の物理学用語を生み出した翻訳の達人・志筑忠雄。「無限の広がりを持つ宇宙」の姿を想像し、宇宙人の存在を予言した豪商の番頭・山片蟠桃。そして天才絵師でありながら天文学に熱中し、人々に地動説を紹介した司馬江漢。彼らはそれぞれ通詞(通訳)・商人・画家という本業を持ちながら、好奇心の赴くまま自由に宇宙を論じたのだった。本書は現代日本を代表する宇宙物理学者が、そうした江戸時代後期の在野の学者らによる破天荒な活躍を追いつつ、当時の宇宙論の先見性を再評価した一冊である。
 

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