西暦1820年 - 『夢ノ代』の完成

日本における科学革命
山片蟠桃『夢ノ代』
山片蟠桃『夢ノ代』
大阪の両替商・升屋の経営を立て直した大番頭の山片蟠桃 (やまがた ばんとう) は、1802年(享和2年)に天文、宗教、経済、歴史等を百科全書的に論じた『夢ノ代』の執筆に着手。冒頭の天文編では、地動説や万有引力の法則を紹介し、オルバースのパラドックスに気づき、無限宇宙と宇宙人の存在にまで想像を広げた。刊行の途中で失明するが、1820年(文政3年)に全12巻を完成させる。
山片蟠桃
山片蟠桃
播磨国印南郡神爪村(現兵庫県高砂市)の農家に生まれた山片蟠桃は、幼い頃から升屋に仕え、24歳の若さで番頭に抜擢され、見事に経営を立て直した。
科学的・合理的な考え方に慣れていた山片蟠桃は、大坂商人が設立した学問所である懐徳堂 (かいとくどう) に学び、『暦象新書 (れきしょうしんしょ) 』の写本を読み込み、「宇宙には点々と恒星が分布し、恒星の周りにはさまざまなタイプの惑星が付属し、その惑星には人間が生きている星もたくさんある」という先進的な宇宙像を考えるに至った。

1802年(享和2年)に『宰我の償 (さいがのつぐのい) 』という題名で寄稿するが、師である中井竹山や中井履軒 (りけん) のレビューを受け、『夢ノ代』に改題し、執筆を続けることになる。
山片蟠桃は1811年(文化8年)に彗星の観察記録を残しており、それがニュートン力学にしたがって運動している太陽系内天体であることを確認している。西洋からもたらされた書物の内容を仮説として、自ら検証する姿勢は、今日の科学者と何ら変わるところがない。こうした市井の啓蒙活動が、1869年(明治2年)の明治維新をして、わが国の産業革命をもたらしたのである。

参考書籍

表紙 江戸の宇宙論
著者 池内 了
出版社 集英社
サイズ 新書
発売日 2022年03月17日頃
価格 1,034円(税込)
ISBN 9784087212068
今やノーベル物理学賞を得るに至った日本の天文学。そのルーツは江戸期の「天才たち」の功績にまで遡る。「重力」「遠心力」「真空」など現在でも残る数多の物理学用語を生み出した翻訳の達人・志筑忠雄。「無限の広がりを持つ宇宙」の姿を想像し、宇宙人の存在を予言した豪商の番頭・山片蟠桃。そして天才絵師でありながら天文学に熱中し、人々に地動説を紹介した司馬江漢。彼らはそれぞれ通詞(通訳)・商人・画家という本業を持ちながら、好奇心の赴くまま自由に宇宙を論じたのだった。本書は現代日本を代表する宇宙物理学者が、そうした江戸時代後期の在野の学者らによる破天荒な活躍を追いつつ、当時の宇宙論の先見性を再評価した一冊である。
 

この時代の世界

1725 1775 1825 1875 1802 1820 『夢ノ代』の完成 1748 1821 山片蟠桃 1798 1802 『暦象新書』の出版 1760 1806 志筑忠雄 1747 1818 司馬江漢 1756 1816 間重富 1821 「大日本沿海輿地全図」完成 1745 1818 伊能忠敬 1775 1844 間宮林蔵 1809 間宮海峡の発見 1825 「四谷怪談」の初演 1823 1829 「富嶽三十六景」 1760 1849 葛飾北斎 1828 シーボルト事件 1796 1866 シーボルト 1814 1842 「南総里見八犬伝」刊行開始 1767 1848 曲亭馬琴 1802 1822 「東海道中膝栗毛」の出版 1765 1831 十返舎一九 1792 大黒屋光太夫がロシア女帝に謁見 1751 1823 大黒屋光太夫 1755 1829 鶴屋南北 1776 1843 平田篤胤 1783 1842 柳亭種彦 1797 1832 鼠小僧次郎吉 1793 1837 大塩平八郎 1793 1841 渡辺崋山 1773 1841 徳川家斉 1787 1856 二宮尊徳 1794 1851 水野忠邦 1793 1855 遠山金四郎 1833 1837 天保の大飢饉 1758 1840 ハインリヒ・オルバース 1838 年周視差の発見 1784 1846 ベッセル 1777 1855 カール・フリードリヒ・ガウス 1812 ラプラスの悪魔 1749 1827 ピエール=シモン・ラプラス 1816 化石による地層同定の法則 1800 ボルタが電池を発明 1745 1827 ボルタ 1772 1837 シャルル・フーリエ 1766 1844 ジョン・ドルトン 1812 『グリム童話』出版 1786 1859 ヴィルヘルム・グリム 1785 1863 ヤーコプ・グリム 1839 ダゲレオタイプ 1787 1851 ルイ・ジャック・マンデ・ダゲール 1822 階差機関の設計 1791 1871 チャールズ・バベッジ 1816 万華鏡の発明 1781 1868 ディヴィッド・ブルースター 1818 「フランケンシュタイン」の出版 1797 1851 メアリー・シェリー 1825 世界初の鉄道路線 1781 1848 ジョージ・スチーブンソン 1817 自転車の発明 1785 1851 カール・ドライス 1804 ナポレオンが皇帝になる 1769 1821 ナポレオン・ボナパルト 1763 1814 ジョゼフィーヌ 1814 ウィーン会議 1815 神聖同盟 1773 1859 メッテルニヒ 1789 1799 フランス革命 1755 1824 ルイ18世 1757 1836 シャルル10世 1773 1850 ルイ・フィリップ 1812 1814 米英戦争 1830 七月革命 1812 1814 米英戦争 1794 1858 ペリー 1791 1872 サミュエル・モールス 1813 1854 カメハメハ3世 1810 1821 メキシコ独立戦争 1783 1824 イトゥルビデ 1846 1848 アメリカ・メキシコ戦争 1815 神聖同盟 1777 1825 アレクサンドル1世 1815 j1815-ro.xml 神聖同盟 1796 1855 ニコライ1世 1769 1849 ムハンマド・アリー 1782 1850 道光帝 1785 1850 林則徐 Tooltip
(この項おわり)
header