この頃、プログラムや原稿を書くのに、8ビット・パソコン「MZ-2521」を利用していたのだが、起動するまでに時間がかかるし、外へ持ち出すこともできないといった不便さを感じていた。
そんなとき、パソコン通信で知り合った中村満氏が経営するビレッジセンターから「VZ Editor」というテキストエディタを発売するということを聞き、これを利用したいがために J-3100SS を購入した。
写真の画面は鈴鹿サーキットのコース図なのだが、この頃、東芝はF1レーサーの鈴木亜久里をCMキャラクターに起用していた。彼が乗るラルースチームのF1マシンには東芝のロゴが掲げられており、チームにノートPCを提供していたという。
そんなとき、パソコン通信で知り合った中村満氏が経営するビレッジセンターから「VZ Editor」というテキストエディタを発売するということを聞き、これを利用したいがために J-3100SS を購入した。
写真の画面は鈴鹿サーキットのコース図なのだが、この頃、東芝はF1レーサーの鈴木亜久里をCMキャラクターに起用していた。彼が乗るラルースチームのF1マシンには東芝のロゴが掲げられており、チームにノートPCを提供していたという。
CPU 80C86
音響カプラ
パソコン通信のためのモデムボードがオプション販売されていたが、当時、構内電話や公衆電話にモジュラージャックを備えたものは少なかったことから、シャープの音響カプラを購入した。受話器を置いて、アナログモデムの働きをさせるためのアダプタであるが、通信速度は300bpsしか出なかった。
それでも、テキストファイルの受け渡しが主なモバイル用途としては十分な速度で、J-3100SS と音響カプラの合計3kgほどの機器が入るバッグを新調した。
それでも、テキストファイルの受け渡しが主なモバイル用途としては十分な速度で、J-3100SS と音響カプラの合計3kgほどの機器が入るバッグを新調した。
外部記憶装置
J-3100SS は、ハードディスクドライブは内蔵しておらず、移動時の衝撃でドライブが破損することは心配なかった。当時のHDDは、電源ON中に少しの衝撃でもヘッドがディスク面に接触し故障することがあったのだ。だが、ストレージが3.5インチ・フロッピーディスクが1台だけというのが心許なかった。(翌年、J-3100GS を購入したことで解決)
MS-DOSと開発環境
J-3100SS は、OSとして日本語MS-DOSを標準搭載しており、プログラム開発にはフリーソフトのCコンパイラ「LSI-C 86 試食版」を主に使っていた。機械語を織り交ぜて書くことができ、J-3100SS のハード機能を活用することができた。
日本語環境
J-3100SS は、1986年(昭和61年)にアメリカで発売されたPC/AT互換機 T3100 をベースに、独自の日本語処理機能を追加していた。日本語表示はハードウェアで行っており、内蔵漢字ROM以外のフォントを表示させることもできた。
この概念は、後にPC/AT互換機を日本語化する DOS/V 規格として標準化されるが、J-3100シリーズとは異なるアーキテクチャであった。
この概念は、後にPC/AT互換機を日本語化する DOS/V 規格として標準化されるが、J-3100シリーズとは異なるアーキテクチャであった。
ダイナブック思想
ダイナブック の語源は、アメリカのコンピュータ科学者アラン・ケイが1972年(昭和47年)に提唱した理想のパソコン「DynaBook」にちなむ。
アラン・ケイは、GUIを搭載した片手で持てるA4サイズ程度の小型コンピュータで、子どもでも買える低価格なもの、テキストに加えて映像や音声も扱うことができ、それを用いる人間の思考を高める働きをするものを DynaBook と呼んだ。
これに基づき、ゼロックスのパロアルト研究所で暫定版として開発したのが、Smalltalkを動作させる Alto というミニコンであった。これは、後にスティーブ・ジョブズを刺激し、Macintosh を開発するきっかけになった。
J-3100SS は、A4サイズという点では DynaBook の要求を満たしていたが、まだWindowsは出ておらずMS-DOSというCUIベースのUIであり、映像や音声を扱えるだけの十分なメモリもなかった。20万円という価格も、「子どもでも買える」というレベルではない。
とはいうものの、1990年代に入ると、急速にノートPCが普及していくことになる。
また、この6年後、同じ DynaBook の流れをくむ Macintosh を買うことになる。
アラン・ケイは、GUIを搭載した片手で持てるA4サイズ程度の小型コンピュータで、子どもでも買える低価格なもの、テキストに加えて映像や音声も扱うことができ、それを用いる人間の思考を高める働きをするものを DynaBook と呼んだ。
これに基づき、ゼロックスのパロアルト研究所で暫定版として開発したのが、Smalltalkを動作させる Alto というミニコンであった。これは、後にスティーブ・ジョブズを刺激し、Macintosh を開発するきっかけになった。
J-3100SS は、A4サイズという点では DynaBook の要求を満たしていたが、まだWindowsは出ておらずMS-DOSというCUIベースのUIであり、映像や音声を扱えるだけの十分なメモリもなかった。20万円という価格も、「子どもでも買える」というレベルではない。
とはいうものの、1990年代に入ると、急速にノートPCが普及していくことになる。
また、この6年後、同じ DynaBook の流れをくむ Macintosh を買うことになる。
項目 | 仕様 | コメント |
---|---|---|
CPU | 80C86 10MHz |
|
RAM | 640KB + 896KB | 最大 3,500KB |
外部記憶装置 | 3.5インチ・フロッピーディスクドライブ(1.2MB/720KB)×1 | |
表示 | 640×400ドット,モノクロ液晶ディスプレイ | ELバックライト付 |
バッテリー駆動時間 | 約2.5時間 | |
同梱ソフト | 日本語MS-DOS ATOK 7をROM搭載 |
|
外形寸法 | 幅310mm×奥行254mm×高さ44mm | |
質量 | 約2.7kg |
1989年に発売された主なパソコン
メーカー 機種 |
発売時期 定価 |
CPU | OSなど | 主記憶 外部記憶 |
画像表示 |
---|---|---|---|---|---|
富士通 FM TOWNS |
1989年2月 33万8千円~ |
32ビット 386DX 16MHz |
TownsOS MS-DOS Windows 3.x |
1~2Mバイト FDD CD-ROM 別売HDD |
1024×512ドット 256色カラー FM音源6和音+PCM8チャンネル |
EPSON PC-286NOTE |
1989年6月 45万8千円~ |
16ビット V30 10MHz |
MS-DOS 2.11 | 640Kバイト RAMディスク |
640×400ドット 8階調 |
NEC PC-9801LX5C |
1989年8月 74万8千円~ |
16ビット 80286 12MHz |
N88-BASIC MS-DOS |
640K~3.6Mバイト FDD HDD |
640×400ドット 8色カラー |
NEC PC-9801N |
1989年10月 24万8千円~ |
16ビット V30 10MHz |
N88-BASIC MS-DOS |
640K RAMディスク |
640×400ドット 8階調 |
NEC PC-H98 |
1990年1月 99万5千円~ |
32ビット 386DX 33MHz |
N88-BASIC MS-DOS 3.3 Windows 3.0 |
1.5~5.5Mバイト FDD 別売HDD |
1120×750ドット 256色カラー |
参考サイト
- J-3100SS:コンピュータ博物館
- 近代科学資料館は日本一の計算機コレクション:ぱふぅ家のホームページ
これまでお世話になったコンピュータ
- 1978年:カシオ FX-31
- 1979年:カシオ FX-502P
- 1981年:カシオ FX-602P
- 1983年:シャープ PC-1255
- 1984年:シャープ MZ-1500
- 1985年:シャープ MZ-2521
- 1989年:東芝 J-3100SS
- 1990年:東芝 J-3100GS
- 1991年:エプソン PC CLUB
- 1995年:NEC PC-9801BX3
- 1995年:アップル Performa 5220
- 2001年:アップル PowerBook G4
- 2003年:富士通 FMV LIFEBOOK 7140MR4
- 2006年:アップル MacBook
- 2008年:パナソニック Let's note CF-Y7D
- 2008年:アップル MacBook
- 2008年:ソーテック C101B4
- 2012年:Panasonic Let's note CF-SX1
- 2013年:アップル MacBook Pro 13インチ
- 2013年:アップル MacBook Pro 15インチ
- 2014年:アップル iMac 27インチ
- 2015年:カシオ fx-JP900
- 2018年:Panasonic Let's note CF-SZ6
- 2019年:アップル MacBook Pro 13-inch 2019
- 2021年:ASUS ROG Zephyrus G14
(この項おわり)
世界初のA4ファイルサーズのノートPCで、のちに世界標準とまで言われるようになった DynaBook シリーズの初代機である。