西暦1934年 - ヒトラー総統の登場

アドルフ・ヒトラー

1934年8月19日、ドイツ・ナチス党首アドルフ・ヒトラーは国民投票で89.93%という支持率を得て大統領の職能を獲得した。ヒトラーは自らをFührer（ヒューラー，総統）と呼ばせた。

1914年、第一次世界大戦に破れたドイツでは、世界で最も民主的といわれるヴァイマル憲法（ワイマール憲法）が発布される。しかし、6月28日に締結されたベルサイユ条約で課された天文学的な賠償金（アメリカがドイツに貸し付ける形になった）に加え、フランスにルール地方を占領されるなど、国内は不安定な状態が続いていた。

1919年1月5日、トゥーレ協会のメンバーの1人であったアントン・ドレクスラーがドイツ労働者党（DAP）を立ち上げる。初期の党員は約40名と言われている。
9月12日、当時ドイツ陸軍の伍長であったヒトラーは、労働者党の会合へスパイとして潜入し、大論争を展開する。ヒトラーの弁論に感銘を受けたドレクスラーは、ヒトラーに入党を勧める。

ヒトラーが入党すると瞬く間に同調者を集め、1920年2月24日、国家社会主義ドイツ労働者党（NSDAP，ナチス）に改名する。
1923年11月8日、ヒトラーらはクーデター（ミュンヘン一揆）を起こす。しかし1日で鎮圧され、ヒトラーは裁判で有罪になり、ナチスは解散させられる。
獄中のヒトラーは、口述筆記により有名な『わが闘争』を著す。
1925年2月27日、禁止が解除されたナチスが再建される。

1929年、暗黒の木曜日から世界恐慌が始まると、アメリカはドイツへの債務の返済を要求した。ドイツは金融危機に陥り、政府は緊縮政策と増税で乗り切ろうとするが、多くの企業が倒産し、失業者は650万人に達した。
ナチスは国民に仕事とパンを与えることを約束し、選挙活動を展開。中産階級や農民の支持を得て、1933年1月30日、ヒトラーを首相とする内閣が誕生する。
ヒトラーは大量の国債を発行し、金本位制から離脱した。また、アウトバーン（高速道路）建設をはじめとする大規模公共事業を展開し、大企業・富裕層に増税した。第一次世界大戦における賠償金の支払いを一方的に拒否した。その結果、失業者は50万人まで減少し、ヒトラーの人気は更に高まった。
ナチスは2月27日の国会議事堂放火事件を契機にヴァイマル憲法を停止し、一党独裁体制を固める。
1934年8月2日、ヒンデンブルク大統領が在任のまま死去した。ヒトラーは直ちに「ドイツ国および国民の国家元首に関する法律」を発効させ国家元首である大統領の職務を首相の職務と合体させ、自身に大統領の職能を移した。この措置は8月19日の国民投票で追認された。