西暦1914年 - 第一次世界大戦

4年4ヶ月の戦争で西欧は疲弊する
フェルディナンド大公夫妻が乗ったオープンカー
フェルディナンド大公夫妻が乗ったオープンカー
1914年6月28日、オーストリアの皇太子フランツ・フェルディナンド大公が妻ゾフィーを伴なって、当時オーストリア領だったボスニア州(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)の首都サラエボにやってきていた。パレードの最中、夫妻はセルビア系ボスニア人の青年、ガブリロ・プリンツィップによって暗殺されるというサラエボ事件が起きた。
戦争で破壊されたベルギーのイープルの町 - 第一次世界大戦
戦争で破壊されたベルギーのイープルの町
フェルディナント暗殺の知らせはウィーンに届き、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世は激怒した。
セルビアの背後にはロシア帝国が控えていた。ロシアは汎スラブ主義を掲げ、バルカン半島への進出を目論んでいた。このままではセルビアとの戦争になるが、ロシアが参戦したらオーストリアの勝ち目はない。
フランツ・ヨーゼフ1世
フランツ・ヨーゼフ1世
ヨーゼフ1世は、汎ゲルマン主義を掲げる同じゲルマン民族のドイツに帝国支援を求めた。ドイツはこれを了承した。
一方のロシアも強硬姿勢を崩さず、フランス、イギリスを味方に付けた。フランス、イギリスはドイツと植民地の利権を巡って争っていたからである。

1914年7月27日、まずフランスが海軍の動員を発令。ロシア、ドイツが続いた。
そして7月28日、オーストリアがセルビアに宣戦布告し、第一次世界大戦が始まる。ドイツを中心に、オーストリア、オスマン帝国などが属する同盟国に対し、イギリス、フランス、ロシア、アメリカ、日本などの連合国が総力戦を繰り広げた。
マークI戦車
マークI戦車
第一次世界大戦では、当初、ナポレオン戦争から続く騎馬と歩兵による突入戦が行われたが、機関銃が登場し、一度に多くの死傷者を出すようになった。そこで、塹壕を掘って前進する塹壕戦へ移行した。西部戦線の塹壕は北海まで700kmにも及んだ。
12月に終わると考えられていた戦争は消耗戦となり、長期化した。
塹壕戦
塹壕戦
塹壕を突破するため、イギリスはトラクターを改造して世界初の戦車を開発した。陸上軍艦委員会を組織して開発を推進したのは、海軍大臣ウィンストン・チャーチル(のちに首相)であった。水を入れるタンクに偽装して戦場へ運んだことから、戦車は「タンク」と呼ばれるようになった。塹壕の兵士を殺すための毒ガスや火炎放射器、手榴弾が開発された。
Uボート
Uボート
敵国を空爆するため、飛行船や航空機が投入された。
ドイツは潜水艦 Uボードを開発し、1915年から海上封鎖を行い、連合国の物資の輸送を阻んだ。
ドイツでは労働時間を延ばして武器を増産するため、1916年4月、夏時間が導入された。
ヴィルヘルム2世
ヴィルヘルム2世
第一次大戦が始まって間もなく、バイエルン王国出身のアドルフ・ヒトラー(のちの総統)は義勇兵として参加。ドイツへの愛国心をかき立てたが、彼がドイツ市民権を得るのは1932年になってからだった。
マハトマ・ガンジーは、イギリスがインドの自治を約束したことを信じ、インド人へイギリス植民地軍への志願を呼びかける運動を行った。

1917年2月、戦争で疲弊したロシアで二月革命が起き、翌1918年3月、ブレスト=リトフスク条約を締結し講和する。
1916年12月のアメリカの参戦により、ドイツの敗戦が濃厚となっていた。1918年11月、キール軍港の水兵が反乱をきっかけにドイツ革命が起き、皇帝ヴィルヘルム2世が退位し、共和国政府が樹立された。

日本の参戦

1914年8月、日本は日英同盟にもとづきドイツに対し宣戦を布告、第一次世界大戦に参戦する。陸海軍を中国のドイツ軍基地へ向けて出撃させ、ドイツ軍が支配していた青島 (チンタオ) や南洋諸島を占領する。
この年の12月18日、東京駅が開業した。

1915年、日本は中国に「21箇条の要求」を突きつける。これにはアメリカが強く反対し、中国の袁世凱 (えんせいがい) は、そのうち14項目を承認することになる。

第一次世界大戦は長引き、連合国から日本へ物資の注文が増え、日本は好景気に沸き、国の借金はなくなった。また、大金持ちが登場し、成金 (なりきん) と呼ばれた。

終戦

1918年11月、ドイツ共和国政府は休戦に応じ、第一次世界大戦が終結する。
1918年3月に流行がはじまったスペインかぜ(インフルエンザ)により、世界人口の4分の1から3分の1が感染。2000~5000万人が死亡したことにより、終戦が早まったとも言われる。

ドイツの敗北によって第一次世界大戦が終結する。4年4ヶ月の戦争で、戦死者1000万人、傷病者は2000万人に及んだ。様々な新技術を用いた総力戦は、とくにヨーロッパ諸国に大きな傷跡を残した。
第一次大戦前後に4つの帝国が滅んだ。ドイツ、オーストリア、ロシア、オスマンである。それにともなって、ソヴィエト連邦をはじめとする多くの新しい国が生まれた。
中国の清朝は1911年の辛亥革命で滅びているが、その後の情勢は混沌として、中華人民共和国が生まれるには、まだ時間を必要としていた。

1919年1月、パリで講和会議が開かれ、日本も参加する。6月、ベルサイユ条約が締結される。
この戦後処理は、ドイツに責任を押しつけ、過大な負担を強いるものであった。この処霞がヒトラーの台頭を呼ぴ、やがて第二次世界大戦の勃発につながる。ドイツ、イタリア、日本をはじめとする枢軸国と、イギリス、フランス、アメリ力、ソ連などの連合国の戦いは、後者の勝利に終わった。

日本が併合を断行した韓国では、1919年3月1日、宗教団体を中心に独立運動が行われた(三・一運動)。また中国では、ドイツの権益が日本に渡されることを知った学生などを中心に天安門広場でデモ行進が行われ、反日感情が高まる(五・四運動)。

日本では、第一次世界大戦で戦争成金が誕生する一方、労働者の暮らしは依然として厳しかった。
1911年、鈴木文治 (すずきぶんじ) は「友愛会」を立ち上げ、労働運動を広げる。1920年5月2日、日本初のメーデーが行われ、友愛会は日本労働総同盟と改名する。

1919年11月、平塚らいてう (ひらつからいちょう) 市川房枝 (いちかわふさえ) らにより日本婦人協会が創設される。

サラエボ事件付近の地図

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参考書籍

表紙 第一次世界大戦の起原 改訂新版
著者 ジェームズ・ジョル/池田清(政治学)
出版社 みすず書房
サイズ 単行本
発売日 2007年06月
価格 4,620円(税込)
ISBN 9784622073215
戦争と革命の世紀となった20世紀。その序幕は、第一次世界大戦の勃発だった。“運命の夏”1914年7月に、長い導火線の火はついにサライェヴォで爆発し、ヨーロッパ各国はつぎつぎと戦争に突入する。しかもそれは短期決戦という予想を裏切り、史上はじめての総力戦となった。開戦の複雑な経緯は、いまだに歴史家を魅了してやまない。著者はいわゆる「7月危機」に焦点を絞り、そこにダイナミックに集中していく歴史の力学のベクトルを、ひとつひとつ検証していくー帝国主義的な軍備競争、各国の内政の力関係、国際経済、時代の雰囲気。それらは開戦の決定にどう連動したか。また、決定責任者の個人責任はどこまで追及されるべきか。改訂新版は、初版刊行後8年間の研究を組み込み、とくに戦争の導火線といわれたイタリアの動向をより深く掘り起こして、戦争の起原を長いタイムスパンで解明する。
 
(この項おわり)
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