西暦1948年 - ヘール望遠鏡が完成

世界最大の天体望遠鏡
ヘール望遠鏡
ヘール望遠鏡
1948年(昭和23年)2月に、米カリフォルニア工科大学・パロマ天文台に、口径5メートル(200インチ)のヘール望遠鏡が完成する。ハッブルの法則の発見者で、ウィルソン山天文台職員のエドウィン・ハッブルが最初の観測を行った。

ヘール望遠鏡は、天文学者ジョージ・ヘールを記念して、1970年(昭和45年)にこの呼称に改められた。
ジョージ・ヘール
ジョージ・ヘール
ジョージ・ヘールは、1868年(慶応4年)、エレベーター製造で財産を築いたウィリアム・ヘールの息子としてシカゴで生まれる。少年時代から、自宅屋上に設置した天体望遠鏡で天体観測を行っていた。
マサチューセッツ工科大学へ進み、太陽光を撮影するスペクトロヘリオグラフを発明する。これによって、初めてプロミネンス(紅炎)の写真撮影に成功する。この功績で、1892年(明治25年)、シカゴ大学の天体物理学助教授になる。

大きな天体望遠鏡の必要性を感じていたヘールは、1897年(明治30年)、シカゴの実業家チャールズ・ヤーキスから資金を受け、口径1メートルの世界最大の屈折望遠鏡を備えたヤーキス天文台を建設する。100年以上を経た現在でも、屈折望遠鏡としては世界最大である。
フッカー望遠鏡
フッカー望遠鏡
さらに1904年(明治37年)、カーネギー研究所から寄付を受け、口径2.5メートルの世界最大の反射望遠鏡「フッカー望遠鏡」を備えたウィルソン山天文台を建設し、台長に就任した。

あわせて太陽光を分析するスノー太陽望遠鏡が設置され、1908年(明治41年)にヘールは、太陽黒点には2000~3000ガウスという強い磁界があることを発見した。
これは、1866年(慶応2年)にイギリスの天文学者ノーマン・ロッキャーが、望遠鏡に分光写真器を取り付けることによって昼間でも太陽の分光観測を行い黒点の吸収線を分離発見したことに加え、オランダの物理学者ピーター・ゼーマンが実験室で強い磁場をかけたときのスペクトル線の分裂を測定し、1899年(明治32年)にゼーマン効果を発見したことを結びつけた成果だった。
ノーマン・ロッキャー
ノーマン・ロッキャー
ちなみに、ゼーマンは、ゼーマン効果の発見により1902年(明治35年)のノーベル物理学賞をローレンツとともに受賞した。

ヘールは、さらにロックフェラー財団から資金援助を得て、標高1,713メートルのパロマ山に天文台を建設するが、その完成を見ることなく1938年(昭和13年)に死去する。
研磨作業が再開される主鏡
研磨作業が再開される主鏡
口径5メートルの主鏡は小さな歪みも許されない。そこで、熱膨張率の小さいコーニング社のパイレックス・ガラスが使われた。ガラス材自体の重みで歪まないように、裏をくりぬくことで軽量化した鏡材は、1934年(昭和9年)に完成する。

その後、パサデナの工場で研磨が始まるが、第二次世界大戦が始まり、作業が中断してしまう。1947年(昭和22年)、ようやく研磨が完了し、主鏡はパロマ山に運び込まれる。1948年(昭和23年)6月、完成式典が開催される。
ヘール望遠鏡が最初に撮影した NGC 2261
ヘール望遠鏡が最初に撮影した NGC 2261
ヘール望遠鏡は、大口径の威力を発揮し、銀河や恒星スペクトルの研究など、他の追随を許さない研究成果を上げた。さらに、ナショナルジオグラフィック協会の出資により、1948年(昭和23年)から10年かけ、パロマ天文台スカイサーベイ(POSS)が行われ、観測可能な全天を22等級の感度(人間の目の100万倍)で撮影された。
1975年(昭和50年)、ソ連に口径6メートルの BTA-6 が完成し、世界一の座を明け渡すことになるが、現在も補償光学によって各種観測を続けている。

参考書籍

表紙 太陽の支配
著者 デイビッド・ホワイトハウス/西田美緒子
出版社 築地書館
サイズ 単行本
発売日 2022年03月30日頃
価格 3,520円(税込)
ISBN 9784806716327
人々が崇め、畏れ、探究してきた太陽。 神話に登場する姿から、ガスと塵の雲から誕生した姿、 白色矮星として迎える死の姿まで、 太陽観測が継続している中でわかったこと、わかっていないこと、 さらに、太陽が死を迎えた時に人類が生き延びる可能性について。 神話、民俗学から天文学まで、太陽と人の関わりを網羅した1冊。 『月の科学と人間の歴史』の姉妹本。
 

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