西暦1821年 - コーシー『解析教程』

微積分の完成
オーギュスタン=ルイ・コーシー
オーギュスタン=ルイ・コーシー
1821年、フランスの数学者オーギュスタン=ルイ・コーシーは解析学の教科書『解析教程』を表し、無限小・無限大という曖昧な表現によらずに、ε-δ論法 (イプシロン-デルタろんぽう) を用いて微積分を定義した。これにより、無限小や無限大と言った曖昧な表現によらずに微分・積分の定義を行った。
ただし、コーシーの著書には、連続と一様連続の区別をしなかったための誤りが含まれている。ε-δ論法の完成は、ドイツの数学者カール・ワイエルシュトラスの1860年代の講義によるとされている。
ヨハネス・ケプラー
ヨハネス・ケプラー
図形の面積や立体の体積を求めるために、古代エジプトや古代ギリシア、アラビアに積分法のアイデアがあった。
1615年、ドイツの天文学者ケプラーは『葡萄酒樽の新立体幾何学』を著し、たるに入ったワインの体積を無限に薄い円板の集まりとみなすことで計算できることを示した。
ボナヴェントゥーラ・カヴァリエーリ
ボナヴェントゥーラ・カヴァリエーリ
ガリレオの弟子ボナヴェントゥーラ・カヴァリエーリは、『葡萄酒樽の新立体幾何学』にヒントを得て、1635年に極微の領域の面積や体積の総和として面積や体積を求める方法を『不可分者による連続体の新幾何学』に発表した。これをカヴァリエリの原理と呼び、微積分学の基礎を築いた。
アイザック・ニュートン
アイザック・ニュートン
イギリスの科学者アイザック・ニュートンは万有引力の法則を発見し、1687年に出版した『自然哲学の数学的諸原理』(プリンキピア)に著した。ニュートンはこの中で微積分法を用いず、幾何学的に運動方程式を説明している。しかし、ニュートンが残したメモから微積分の基本定理を認識していたことが分かっており、没後の1704年に『求積論』が出版される。このなかで、微分と積分が互いに逆の操作・演算であることを記している。
ゴットフリート・ライプニッツ
ゴットフリート・ライプニッツ
微積分法を体系的に整理したのはドイツの数学者ゴットフリート・ライプニッツであった。『極大と極小にかんする新しい方法』(1684年)で微分法を、『深遠な幾何学』(1686年)で積分法を扱い、\( \displaystyle \int, \frac{d}{dx}, dx \) といった微積分でお馴染みの記法を考案した。
当時、大砲の弾を正確に飛ばしたいというニーズが拡大していた。このため、イギリスとドイツが国の威信をかけて、ニュートンとライピニッツのどちらが微積分法の創始者であるかをめぐって争った。現代では、2人の共同成果とされている。
ジョージ・バークリー
ジョージ・バークリー
アイルランドの聖職者ジョージ・バークリーは、哲学者として抽象観念の存在を否定する人物だった。1734年に出版した『解析家』のなかで、当時の微積分の基礎になっている無限小に対し、\( \displaystyle \frac{d}{dx} \) において \( dx \) が無限小にすることは、\( \displaystyle \frac{0}{0} \) と同義であり、解析家は論理的な誤りを拡散していると断罪した。
フランスの数学者ジャン・ル・ロン・ダランベールは極限を利用することで反論したが、極限の概念が曖昧であった。その後、ジョゼフ=ルイ・ラグランジュレオンハルト・オイラーカール・フリードリヒ・ガウスといった名だたる数学者が挑んだが、バークリーの糾弾を覆すことはできなかった。
無限小・無限大を使わずに関数の極限を定義するのがε-δ論法だ。これを使って微分をあらわすと、
任意の正の数 \( \varepsilon < 0 \) に対して、ある正の数 \( \delta > 0 \) が存在して、
\( 0 < hhh < \delta \) を満たす全ての \( h \) に対して、
\[
\left\lvert \frac{f(a + h) - f(a)}{h} - f'(a) \right\rvert < \varepsilon
\]
が成り立つ。
となる。

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