西暦1979年 - パーソナルコンピュータ「PC-8001」発売

PC-8001
PC-8001
1979年(昭和54年)5月16日から19日にかけ東京両国国際会議場(現・両国国技館)で開催されていた「第3回マイクロコンピュータショウ」で、日本電気(NEC)はパーソナルコンピュータ「PC-8001」を発表する。
1978年(昭和53年)12月に発売されたシャープ「MZ-80B」は半完成品(セミキットモデル)だった。
PC-8001
PC-8001
1978年(昭和53年)9月に発売された日立製作所の「ベーシックマスター MB-6880」は完成品で、箱から取り出してすぐ使えるもので、日本国内初の8ビットパソコンとして未来技術遺産に登録されている。
これらに遅れて登場した PC-8001 だったが、9月に発売開始されたときの希望小売価格168,000円が市場に受け入れられた。
PC-8001
PC-8001
1万台近くの受注残を消化するのに半年以上を要するほどで、1983年(昭和58年)1月の販売終了までに累計25万台を出荷し、国内にパソコン市場を誕生させた。販売終了まで 168,000円の価格は改定しなかった。
日本で初めて「パーソナルコンピュータ」と呼ばれた機種でもあった。発売日開始日は諸説あるが、のちに9月28日がパソコン記念日(パソコンの日)と呼ばれるようになった。
PC-8001のマザーボード
PC-8001のマザーボード
1978年(昭和53年)夏頃、日本電気電子デバイス販売事業部マイクロコンピュータ販売部長の渡邊和也と設計主担当の後藤富雄を筆頭とする10人のチームで、PC-8001 の開発がはじまった。社内での開発コードは「PCX-1」だった。それまでマイコン(マイクロコンピュータ)と呼ばれていたものを、NECはパーソナルコンピュータ(PC)と呼んだ。
TK-80
TK-80
NECには、1976年(昭和51年)8月に発売したトレーニングキット「TK-80」で培った協力会社との関係や、販売拠点として設置した Bit-INN などを通じて全国展開できる販売技術網があった。
秋葉原Bit-inn(1976年)
秋葉原Bit-inn(1976年)
NECのデバイス部門は、インテルやザイログのCPUを解析して独自で高性能のCPUを試作したが、基板に載せシステム全体として動かすとなると、1つだけ技術が突出していても意味が無い。そこで、自社の技術力を見せつけるのではなく、最初からデファクトスタンダードを目指した。
たとえば、標準添付するBASICインタプリタも自社開発していたが、あえてマイクロソフト製品を選択した。
MZ-80K
MZ-80K
先行するシャープの MZ-80K は、起動後、基本ソフトを外部からローディングする「クリーンコンピュータ」方式だった。これに対し、PC-8001 では基本ソフトを ROM に書き込んでおく仕組みをとった。渡辺は、これを「ダーティーコンピュータ」と呼ぶ。
当時、外部記憶メディアといえばカセットテープが主流で、MZ-80K は基本ソフトであるBASICインタプリタをロードするのに約5分かかった。それに比べ、PC-8001 は起動後すぐに使える状態になる。これがユーザーに受け入れられた。
日立ベーシックマスター
日立ベーシックマスター
だが、ソフトウェアにバグは付きものである。カセットテープであれば交換が利くが、ROM になるとそう簡単に交換できるものではない。そこで渡辺が目を付けたのがマイクロソフト社のBASICインタプリタだった。
(右)ビル・ゲイツ, (左)西和彦 1978年
>(右)ビル・ゲイツ, (左)西和彦 1978年
1978年(昭和53年)11月に、渡辺は米ロサンゼルスで開催された「WCCF」の視察を理由に、マイクロソフトを訪問する。当時従業員が12人しかいなかったマイクロソフトだったが、ビル・ゲイツが語るデファクトスタンダートの重要性に渡辺は気付いた。
N-BASICの起動画面
>N-BASICの起動画面
アスキーの副社長、西和彦の仲介で、日本市場を狙っていたゲイツの目論見もあり、格安のライセンス料でマイクロソフトは BASIC を NEC に提供――DISK BASIC version 4.51をベースに、PC-8001用にグラフィック機能や通信機能を追加し、N-BASIC として、24KバイトのROMにパッケージングした。
PC-8001 は本体とキーボードが一体型だった。渡辺は、社内の大型電算機部門からの意見には耳を貸さず、計算機科学者として名を馳せていた石田晴久の助言を採り入れ、ミニコンの端末としても通用するシックなデザインとテレタイプ仕様のキーボードレイアウトを採用した。本体には、最低限必要なプリンタ、カセットテープ、CRTインタフェースしか内蔵していなかった。
PC-8001 は家庭用テレビに接続ができるが、本体よりも約5万円も高い専用CRTモニタを接続すると、160×100ドット、8色同時表できるグラフィック機能が手に入る。前述の WCCF でお披露目されたばかりの Apple II の 280ドット×192ドット、4色よりも色数が多く、表現力が豊かだった。
CRTコントローラは、銀行ATMなどのために使われていた文字表示機能しかない「μPD3301」を流用し、256パターンのグラフィックス表示用文字を定義し、擬似的にグラフィックを実現したのだ。
CPUには、Z80 互換のNEC製μPD780C-1(4MHz)が搭載され、ROM 24KB(最大32KB)、RAM 16KB(最大32KB)という仕様になった。メモリを最大にすることで、CP/Mも利用できた。

1981年(昭和56年)12月に、上位機種の「PC-8801」と下位機種の「PC-6001」が発売される。
1983年(昭和58年)3月に、後継機の PC-8001mkII が発売され、RS-232Cや5インチFDDインターフェース、拡張スロットを標準搭載。漢字表示もできるようになった。価格は123,000円。
1985年(昭和60年)1月に、後継機の PC-8001mkIISR が発売され、グラフィックやサウンド機能を強化しながら、価格は108,000円に。

参考サイト

この時代の世界

1875 1900 1925 1950 1975 2000 2025 2050 1900 1900 1900 1900 1900 1900 1900 2000 2000 2000 2000 2000 2000 2000 1979 パーソナルコンピュータ「PC-8001」発売 1931 2021 渡邊和也 1946 後藤富雄 1978 日本語ワードプロセッサ「JW-10」発表 1982 PC-9801発売 1983 ファミリーコンピュータ発売 1985 アーケードゲーム『スペースハリアー』登場 1987 パソコン「X68000」発売 1990 DOS/Vパソコン発表 1971 マクドナルド1号店オープン 1926 2004 藤田田 1973 セブン-イレブン 1号店オープン 1983 東京ディズニーランド開園 1970 人工衛星「おおすみ」打ち上げ 1928 1989 手塚治虫 1926 1997 星新一 1976 ロッキード事件 1918 1993 田中角栄 1907 1988 三木武夫 1905 1995 福田赳夫 1910 1980 大平正芳 1975 1976 沖縄国際海洋博覧会 1972 沖縄返還 1970 大阪万博の開催 1970 三島由紀夫が割腹自殺 1970 よど号ハイジャック事件 1985 日本航空123便墜落事故 1995 地下鉄サリン事件 1995 阪神・淡路大震災 1901 1989 昭和天皇 1955 ビル・ゲイツ 1956 スティーブン・バルマー 1964 プログラミング言語「BASIC」 1977 Apple II 発売 1984 Macintosh発売 1955 2011 スティーブ・ジョブズ 1998 iMac発売 1981 IBM PC発売 1937 1985 ドン・エストリッジ 1969 UNIXの登場 1969 ARPANETが始動 1974 「アルテア8800」発売 1971 インテル、4004発表 1972 プログラミング言語「C」 1977 ボイジャー1号打ち上げ 1969 人類、月に立つ 1981 スペースシャトル初飛行 1920 1992 アイザック・アシモフ 1907 1988 ロバート・A・ハインライン 1934 1996 カール・セーガン 1979 スリーマイル島原子力発電所事故 1973 ウォーターゲート事件 1913 1994 ニクソン 2001 9.11全米同時多発テロ 1957 2011 オサマ・ビン・ラディン 1911 2004 ロナルド・レーガン 1979 SF映画『スタートレック』 1982 SF映画『スタートレックII カーンの逆襲』 1984 SF映画『スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!』 1986 SF映画『スタートレックIV 故郷への長い道』 1987 1994 SFテレビドラマ『新スタートレック』 1986 チェルノブイリ原子力発電所事故 1961 人類初の有人宇宙飛行 1902 1988 マレンコフ 1906 1982 ブレジネフ 1914 1984 アンドロポフ 1911 1985 チェルネンコ 1966 1976 文化大革命 1989 天安門事件 1904 1997 鄧小平 1989 ベルリンの壁崩壊 1970 ペンローズ・ホーキングの特異点定理 1970 プログラミング言語「Pascal」 1990 1991 湾岸戦争 2003 イラク戦争 1979 イラン革命 1979 1989 ソ連のアフガニスタン侵攻 Tooltip
(この項おわり)
header