
ルイ・パスツール
1940年、パリに侵攻してきたドイツ軍は研究所の門衛に、パスツールの納骨室を聞けるよう命じた。このとき門衛は偉大な科学者の尊厳を侵す理不尽な命令を拒絶し、自ら命を断ったのである。この門衛こそ55年前、パスツールに救われた、かつてのジョセフ少年であった。
業績
1843年にパリの高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリウール)に入学したパスツールは、化学を専攻し、1846年に博士号を取得した。
この頃は凡庸な科学者という評価を受けていたが、独創的な仮説を立て、地道な実験によって仮説検証を行う研究スタイルにより、多くの化学・医学上の発見を成し遂げた。
1849年に繊細な実験を行って、酒石酸の工業的製造の過程で生じるパラ酒石酸の関係を明らかにし、フランス科学者の重鎮ジャン=バティスト・ビオに認められた

1857年に高等師範学校の事務局長兼理学部長となり、アルコール製造業者からワインの腐敗原因を調べてほしいという依頼を受け、ここから微生物の研究が始まる。
パスツールは、アルコール発酵が酵母の働きによること、ワインの味を悪くする酢酸発酵は別種の微生物の働きによるものだということを明らかにした。
また、ワインの劣化を防ぐために、医師のクロード・ベルナールと共同で低温殺菌法を開発する。

微生物分野の研究ではドイツのコッホとライバル関係にあった。微生物が動物や人間に感染するという仮説のもと、パスツールは、スコットランドの外科医ジョゼフ・リスターが外科手術におけるフェノール消毒法を開発するのを助けた。

1865年に、微粒子病が蔓延して危機的状況に合った養蚕業を救うため、昆虫学者アンリ・ファーブルを訪ねて教えを受けた。
フランスの窮状を知った徳川家茂将軍は、蚕の卵を皇帝ナポレオン3世に贈呈し、パスツールに研究用としてその一部を分け与えられた。
この頃は凡庸な科学者という評価を受けていたが、独創的な仮説を立て、地道な実験によって仮説検証を行う研究スタイルにより、多くの化学・医学上の発見を成し遂げた。
1849年に繊細な実験を行って、酒石酸の工業的製造の過程で生じるパラ酒石酸の関係を明らかにし、フランス科学者の重鎮ジャン=バティスト・ビオに認められた

1857年に高等師範学校の事務局長兼理学部長となり、アルコール製造業者からワインの腐敗原因を調べてほしいという依頼を受け、ここから微生物の研究が始まる。
パスツールは、アルコール発酵が酵母の働きによること、ワインの味を悪くする酢酸発酵は別種の微生物の働きによるものだということを明らかにした。
また、ワインの劣化を防ぐために、医師のクロード・ベルナールと共同で低温殺菌法を開発する。

微生物分野の研究ではドイツのコッホとライバル関係にあった。微生物が動物や人間に感染するという仮説のもと、パスツールは、スコットランドの外科医ジョゼフ・リスターが外科手術におけるフェノール消毒法を開発するのを助けた。

1865年に、微粒子病が蔓延して危機的状況に合った養蚕業を救うため、昆虫学者アンリ・ファーブルを訪ねて教えを受けた。
フランスの窮状を知った徳川家茂将軍は、蚕の卵を皇帝ナポレオン3世に贈呈し、パスツールに研究用としてその一部を分け与えられた。
自然発生説の否定

ジョン・ニーダム
1748年に、イギリスの生物学者で、カトリックの司祭でもあるジョン・ニーダムは、マトンのスープをガラス瓶にいれてコルクで栓をした後加熱し、冷ました後、数日たってからスープを調べると多くの微生物が発生していたことから微生物が自然発生したと主張した。
だが、イタリアの博物学者のラザロ・スパランツァーニはニーダムの実験に不備があったと考え、1765年にフラスコに入れたスープを加熱殺菌し、フラスコの口を溶かして密封する実験を行い、微生物が自然発生しないことを確かめた。
これに対して自然発生説派は、スパランツァーニの実験は、微生物の自然発生に必要な空気がなくなったためだと反論した。
だが、イタリアの博物学者のラザロ・スパランツァーニはニーダムの実験に不備があったと考え、1765年にフラスコに入れたスープを加熱殺菌し、フラスコの口を溶かして密封する実験を行い、微生物が自然発生しないことを確かめた。
これに対して自然発生説派は、スパランツァーニの実験は、微生物の自然発生に必要な空気がなくなったためだと反論した。

フェリックス・アルシメード・プーシェ
フランス学士院はこの論争に決着させた者に賞金を与えると発表し、フランスの博物学者のフェリックス・アルシメード・プーシェが自然発生説派として、パスツールは反対派として参加した。

白鳥の首フラスコ
パスツールは、フラスコにスープを入れて煮沸したあと、口を引き延ばして白鳥の首のように曲げることで空気は入るが微細な粉末は入らないという「白鳥の首フラスコ」という実験器具を開発し、微生物が自然発生しないことを実証した。1861年に『自然発生説の検討』を著し、自然発生説が否定された。
参考サイト
- くすり偉人伝No.6 パスツール:日本製薬工業協会
参考書籍
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生命と非生命のあいだ | ||
著者 | 小林 憲正 | ||
出版社 | 講談社 | ||
サイズ | 新書 | ||
発売日 | 2024年04月18日頃 | ||
価格 | 1,210円(税込) | ||
ISBN | 9784065356722 | ||
地球に生命が誕生したことは「奇跡」なのか? それとも「必然」なのか? たとえば天文学者のフレッド・ホイルは、生命ができる確率は「がらくた置き場の上を竜巻が通りすぎたあとにジャンボジェットが組み上がっている確率」にひとしく、それは10の4万乗分の1ほどであると言った。それほどできにくいものが、なぜ地球にはこんなに存在するのか? もしかしたら、生命とは本当に「神の仕業」なのか? 「生命の起源」についての仮説として圧倒的な支持を集める「RNAワールド」が説明できないこの問いに、アストロバイオロジーの第一人者が正面から向き合い、フラスコの中から宇宙空間にまで思索を広げて提唱する「がらくたワールド」と「生命スペクトラム」とは何か。非生命はいかにして生命になるのか、神に頼らない説明は、はたして可能なのか? 「生命の起源」研究の全貌と、何が論点なのかを類書にないわかりやすさで整理し、宇宙の開闢と並ぶ現代科学「究極の謎」に挑む、著者の代表作! (おもな内容) ◆生命の材料は「化学進化」で意外と簡単にできる ◆初めてフラスコ内でアミノ酸をつくったミラーの「罪」 ◆生命が誕生したのは海か陸か、それぞれの言い分は? ◆地球に大量のアミノ酸を持ち込んだ隕石と宇宙塵 ◆「RNAワールド仮説」はなぜ圧倒的に支持されているのか ◆生命の材料を正しくつなぎ合わせることがいかに難しいか ◆化学進化の「王道」を行くとRNAは「神のいたずら」になる ◆宇宙に目を向けることで「生命の起源探し」は「科学」になった ◆「地球生命」誕生の謎は「地球外生命」が見つかれば解ける ◆ダーウィン進化の正しい理解から導かれる「がらくたワールド」とは? ◆選ばれたわずかな分子を急激に増加させる「自己触媒反応」の威力 ◆「生命」と「非生命」のあいだに境界はあるのか? など 序 章 「生命」は奇跡か必然か 第1章 生命はどこから来たのか 生命は何者か 第2章 「RNAワールド」への道 第3章 「生命の起源」は宇宙にあるのか 第4章 いつ生まれたのか どこで生まれたのか 第5章 「がらくたワールド」という考え方 第6章 地球外生命から考える地球生命 第7章 生物進化から考える化学進化 第8章 生命のスペクトラム | |||
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科学史人物事典 | ||
著者 | 小山慶太 | ||
出版社 | 中央公論新社 | ||
サイズ | 新書 | ||
発売日 | 2013年02月 | ||
価格 | 1,012円(税込) | ||
ISBN | 9784121022042 | ||
十六世紀のコペルニクスから現代の先端科学まで、160人以上の科学者を選び、業績だけでなく、当時の世相や科学者たちの素顔も紹介。読んで楽しい人物事典。 | |||
この時代の世界
(この項おわり)
狂犬病ワクチンを用い、パスツールは狂犬病の犬に噛まれた9歳の少年ジョセフの命を救った。狂犬病ワクチンの第1号成功例である。これがきっかけとなり、1888年、パリにパスツール研究所が創設された。